昨年11月、カタルーニャのデジタル紙『
Crónica Global』が「さよなら、日産」と題して、日産がヨーロッパでの生産から撤退することが不可能だとは言えなくなっているという記事を掲載した。その中で、「日産は日本、米国、中国がメイン市場で、ヨーロッパ市場は全体の2.5%しかない」と指摘し、更に、EUと日本との貿易自由協定の成立で、「EUは日本から無関税で車を輸入できる」と言及し、ルノーと日産・三菱の提携を尊重すると、「ヨーロッパはルノーの為の市場だ」と述べた。また、日産は昨年3月にインフィニティーのヨーロッパでの販売をしないことを発表したことにも触れた。この様に言及して、結論として「日産がヨーロッパの工場を閉鎖する考えを持っていないとは言えない」と指摘したのである。
但し、これに敢えて付記する必要があるのは、この記事のヨーロッパというのはEUと限定する必要がある。即ち、英国のサンダーランド工場は別だということだ。というのは、2月3日付けで『
フィナンシャル・タイムズ』が、英国のEUからの離脱に伴う交渉で双方の間で関税問題が解決しない場合は、日産はフランスとスペインの工場を閉鎖して英国での生産体制を強固なものにするというプランを日産が昨年末に練っていたということを報じたからである。
唯一、日産が明確にしているのは、英国のEUからの離脱交渉の結果、EUから英国への輸出車に関税を課すという結論に達した場合は、「ビジネスは成り立たない」と言及していることである。これは即ち、スペインでの生産を継続する意義がなくなるということを意味するようになるはずである。
それを暗示させるかのように、日産スペインの組合側がバルセロナの工場で生産できる新しい車種を導入することを執拗に要求しているが、これまでそれが一度も実現していないということ。工場を今後も存続させる為の唯一の手段は新しく生産の為の車種を加えることである。これまで生産されていた車種をフランスの工場に移すことはあっても、フランスの工場からスペインの工場に車種を譲ったことは一度もない。
経営者側では今後も日産スペインが存続して行く保障だとして7000万ユーロ(82億6000万円)を投じて塗装設備をEUが2023年からの適用を義務付けたものに改善すると約束している。しかし、新しい生産車種もないのにそのような投資をするということなど組合側では誰も信じていない。
経営者側ではスペイン・バルセロナの工場は自然に閉鎖せざるを得ない状況に持って行っているようにしか見えない。そうなると、現在の従業員2500名と下請けなど加えると1万人が職場を失うことになることは覚悟しておく必要がある。
現在の日産スペインが置かれている状況は工場閉鎖という危険水域に次第に向かっているようにしか筆者には思えない。
皮肉にも同じバルセロナにはフォルクスワーゲン傘下の自動車メーカーセアット(SEAT)が存在している。日産スペインとは対照的に現在のセアットはカタルーニャのGDPの4%を担い、輸出も伸びている。6800人の従業員に加えて、新たに1000人の雇用を計画している。
セアットをここまで成長させたのが、CEOのポストをつい最近辞任したルカ・デ・メオだ。その彼が6月から日産と提携しているルノーのCEOに就任することになっている。
<文/白石和幸>