コロナの名を関したレメディ販売を始めたホメオパシー
2月13日、
ホメオパシージャパン株式会社が、
「サポートφCorona」(1瓶税別2,550円)という名称の「レメディ」の販売を始めた。現在も、同社や同社の代理店などが販売を続けている。
同社自身は効果効能を謳っていないが、信奉者が「新型コロナウイルスに対するホメオパシーのレメディーが急きょ発売されました!」(某経営者のブログより=現在閲覧不能)などとアピールした。
ホメオパシージャパンの商品を販売するサイト「豊受モール」によると、原材料は「醸造アルコール、ハーブエキス(エキネシア、タラクシカム、ソリデイゴ、スーヤ、ルータ、ダイオスコリア)」。品目名は「スピリッツ」だ。使用法については「ペットボトルの水(500mL)に5~20滴程入れ、お好みで薄めてご飲用ください」(同サイトより)と書かれている。
ホメオパシーとは、レメディと呼ばれる砂糖玉などを飲むことで病気を治療できるとする民間療法。上記の商品のように、砂糖玉ではなく液状のレメディもある。
レメディには、ホメオパシーにおいて症状の原因になると考えられている物質を希釈した水が使用されているとされている。症状に応じて無数のレメディが販売されており、ヒ素や水銀などを用いたものもある。
一般的に、レメディ自体に害はない。100倍希釈を10~30回も繰り返した上で作られるため、レメディにはその物質の分子が1つも入っていないほどとも言われる。
ところがホメオパシーを提唱する団体の中には、一般的な医療による治療やワクチンを否定あるいは批判しながら、ホメオパシーの効能を宣伝するものがある。砂糖玉自体に害がなくても、ホメオパシー信奉者が通常の医療を拒否するために健康を害したり死亡したりする悲劇が後を断たない。
2009年には、「ホメオパシー医学協会」所属の助産師が新生児にビタミンKを投与せずレメディを与えていたところ死亡するという事件が発生。翌2010年、母親が助産師を提訴し、日本学術会議が会長声明を発表。ホメオパシーについて「科学的な根拠がなく、荒唐無稽としか言いようがありません」として、「今のうちに医療・歯科医療・獣医療現場からこれを排除する努力」の必要性を説いた。日本医師会や日本助産師会など、複数の医療関係団体もこれに追随する声明を発表した。
上記の助産師が所属していた「ホメオパシー医学協会」の名誉会長・由井寅子氏は、今回、新型コロナウイルス対策のレメディを発売したホメオパシージャパンの創業者でもある。
ホメオパシー医学協会と由井氏は2月21日にウェブサイト上でも、既存の複数のレメディを組み合わせることによる新型コロナウイルス対策を発表している。
ニセ科学批判特集などを行なってきた科学雑誌『RikaTan(理科の探検)』編集長で、『学校に入り込むニセ科学』(平凡社新書)などの著書がある左巻健男氏は、こう語る。
「結局は単なる砂糖玉と水のレメディ中心ですね。『サポートφCorona』は、それにハーブエキスとアルコールを水に入れたものなので、今までのレメディの問題と基本的に同じです」
マクロビオティック関連団体も「新型コロナウイルス対策」
「マクロビオティック」と呼ばれる、玄米菜食の健康法がある。20世紀初頭に提唱された思想で、1960年代以降のアメリカのニューエイジ運動(スピリチュアルブームの一種)で評価され、その後、逆輸入のように日本での信奉者も増えたとされる。
陰陽思想を起源としており、たとえばナスやトマトは「陰性」、自然薯や梅干しは「陽性」といった調子で、それらのバランスで「中庸」となるような食生活を目指す。砂糖、牛乳、肉、化学調味料は避けるべきものとされる。
無数の団体や信奉者たちがそれぞれに普及活動に勤しんており、ときには他のニセ科学やニセ医療と組み合わされて提唱されることも珍しくない。
「ニューマクロビオティック」を謳う「ムスビの会」は、2月9日、ウェブサイト上に「新型コロナウイルス対策」と題する記事を掲載。マクロビオティック以外も合わせた様々な対策を提唱している。以下「・」印が、それを要約したものだ。
・電磁波を発する電子機器の使用頻度を減らし
・マイナスイオンの多い自然の木々の中で過ごす
・部屋の中を加湿すれば、同じ効果が得られる。ヤカンや鍋から発する水蒸気にマイナスイオンが大量に含まれる。
・発酵食品全般もマイナスイオン(マイナスエレクトロン)が豊富に含まれる。味噌汁や漬物、納豆、甘酒、塩麹。
電磁波を過度に避けようとするのも、「マイナスイオン」云々も、一般的には科学的根拠がないとされている内容だ。
・ウイルスが好きな食べ物が白砂糖と卵、乳製品、お肉。市販のケーキやアイスクリーム、チョコレート、菓子パン、焼肉といった食べ物は、感染症が収束するまでは、あまり食べない方がよい。
「ウイルスは何かを食べているのではなく、自前のタンパク質の合成工場を持っていないので、細胞に寄生して細胞のタンパク質の合成工場を使うだけです。ここに挙げられた食品は、マクロビで嫌っている食べ物というだけのこと。それらを勝手にウイルスが好きな食べ物だということにしている」(前出・左巻氏)
・ウイルスの嫌いな食べ物は塩気と酸。梅干は世界最強の、しかも副作用のない抗生物質。スプレー容器に梅酢を入れ、2~3倍に薄めて持ち歩き、定期的に口の中に噴霧。マスク以上の効果。
・マクロビオティックの梅醤番茶(梅干しと醤油同量をすり鉢で摺ってペースト状の梅醤にし、小さじ1杯の梅醤に煮出した熱々の三年番茶を150ccくらい注いで混ぜたもの)は、感染症の予防役として最強
・感染してしまった場合には、葛湯か黒炒り玄米スープに梅干しの黒焼きを耳かき2杯程度入れて飲めば、症状が和らぐ
「ウイルスはpHが低い(酸性が強い)ものには弱いので、少しは効果があるが、梅干しが世界最強の、しかも副作用のない抗生物質は言い過ぎです。梅醤番茶や葛湯、黒炒り玄米スープについては、私はそのような効果を示す論文を見たことがありません。根拠なく勝手に言っているだけではないでしょうか」(左巻氏)
・恐怖と不安のネガティブな波動がウイルスを引き寄せるので、日々嬉しい、楽しい、幸せという気持ちで過ごしていれば、感染する事はない
「科学の“波動”の話として言うなら、ウイルスを引き寄せるネガティブな波動などというものはありません。ストレスがかかりすぎれば感染しやすくなる面はあるにしても、楽しい気持ちで過ごせば感染することはないというのは言い過ぎ。そしてマクロビのようなこれは駄目、これはいいなどと食べ物を選ばなければならない状態は、それこそストレスになり、また栄養のバランスも悪くなりやすいので感染しやすくなるのではないでしょうか」(左巻氏)