後手後手のダイヤモンドプリンセス対応。枝野立憲代表の質問にまともに答えなかった加藤勝信厚労相

2月26日衆院予算委員会の加藤勝信厚生労働大臣

2月26日衆院予算委員会の加藤勝信厚生労働大臣(衆院インターネット中継)

崩れ去った船内隔離の前提、後手後手の交通機関利用の自粛要請

 ダイヤモンド・プリンセス号に新型コロナウイルス患者を蔓延させたとして、世界から厳しく批判されている日本政府。2月5日から14日間の船内隔離を経て、2月19日から乗客の下船が始まったが、下船者の中に陽性患者が出たことが発覚。14日間の隔離で新たな感染者は出ないという政府対応の大前提は完全に崩れ去った。さらに、下船者に対して公共交通機関の利用自粛を要請したのは下船から4日後の23日であることが明らかになり、日本政府の対応が後手後手であることが改めて浮き彫りとなった。  この問題について、2020年2月26日の衆議院予算委員会で立憲民主党・枝野幸男代表は、加藤勝信厚生労働大臣に質問。本記事ではその質疑の一部の答弁を信号機で直感的に視覚化していく。具体的には、信号機のように3色(はOK、は注意、はダメ)で直感的に視覚化する。(※なお、色表示は配信先では表示されないため、発言段落の後に( )で表記している。色で確認する場合は本体サイトでご確認ください) 20200226 衆議院予算委員会 .配色ルール 質問に対する加藤厚労相の回答を集計した結果、下記の円グラフのようになった。 20200226 衆議院予算委員会 集計結果 <色別集計・結果> ●加藤勝信厚生労働大臣:赤信号24% 黄信号66% 地の色10%  回答(青信号)は0%で全く質問に答えてない。いったいどのような質疑だったのか詳しく見ていきたい。

崩れた「14日間船内隔離で新たな感染はない」という前提

 枝野代表は、政府関係者がダイヤモンドプリンセス乗客に対して14日間の船内隔離を行い、その期間の船内感染は無いという前提で、2月19日からの下船に踏み切ったという事実を振り返りつつ、下船後に感染者が発覚したことでその前提が崩れているのではと加藤厚労相に質問。その質疑は以下の通り。 20200226 衆議院予算委員会 質疑1 枝野代表:「そしてですねー、この、おー、厚労省などの政府職員関係者の皆さんが、いわゆる客室の中にとどまってくださいという一種の隔離をとった後でも船内で感染をしたと思われる状況が複数出ている。同時に、安全確認をして、そして14日間客室で事実上の隔離をして頂いて、そして、その14日間の間にウイルス検査をして陰性だったと言われて、そして、ご自宅等に帰られた方が栃木とそれから徳島ですか、えー、で、えー、確認をされています。政府の関係者の感染もあわせて見れば、客室にとどまりくださいというやり方で14日間、えー、事実上の隔離をしていた。その間は新たな感染は無いという前提で組み立てていた。これは前提が崩れたと言わざるを得ないと思うんですが、いかがでしょうか」 加藤厚労相:「これは、あの、えー、もともと、おー、この船は、あの、香港で降りた方が、えー、感染をしていたというところから話がスタートするわけでありますけども、おー、横浜、最初、那覇に入り、それから横浜に入ってきた。捕捉して、えー、そこで検疫を行う中で、えー、さらに感染者が見つかり、さらに検疫をしていく必要がある。ま、そういう状況でありました。で、えー、2月の5日から、えー、客室の、あー、乗客の皆さんには、あー、客室等に入って頂いて、えー、感染防止の対応をして頂くと。そしてー、しかし、14日間続く中で、高齢者が、70歳以上の方が5割近くという状況もあって、精神的にも肉体的にも大変厳しい。また、そういう話も、い、いろいろ頂きました。他方で感染防止を、おす、しっかり行う必要もあると。そういった意味からチャーター便における知見、今回の感染、こ、この、え、船内における感染、特に乗客の感染状況を分析した結果、この感染防止は有効であったという専門家のご指摘も踏まえて、私たちが、あー、先ほど、委員ご指摘の条件の中で下船の判断をさせて頂いたところであります。(黄信号)  ただ、その時にも、やはり今回、新型コロナウイルスというよく、まだまだ不明な点が多いウイルスであること。それから委員ご指摘のように、もともとやはり感染というものが船内の中では、あー、通常に比べて高いということを含めて、念のための措置として、健康フォローアップをすべきだというお話があり、いー、我々当初は2回から3回程度の健康フォローアップということを想定したわけでありますけども、ま、専門家からもしっかりやるべきだというお話。(黄信号さらに、最終的に2人、えー、下船をされた方で陽性の方が含まれました。従って、それも踏まえて、さらに、このフォローアップ体制を強化していくということで今、対応させて頂いている。こういう状況であります。(赤信号)」  1段落目は、周知の事実であるダイヤモンドプリンセス号の乗客が下船に至るまでの経緯を延々と述べており、黄信号とした。  続く2段落目も健康フォローアップに関する当初の想定を述べているだけであり、黄信号。  最後の3段落目、ようやく下船後に新たな感染者が出たことに言及するが、以下のように論点をすり替えており、赤信号とした。 【質問】新たな感染は無いという前提が崩れたこと ↓ すり替え 【回答】新たな感染が出たことの対応状況  結局、加藤厚労相は前提が崩れたのではないかという質問に対して、一言も回答していない。この回答に対して、枝野代表は以下のように指摘している。 枝野代表:「あの、なぜ、こういう判断をしたかということはお答えになって頂いてるんですが、しかしながら、現実に乗客の中から2人、少なくとも現時点で、えー、感染を、おー、5日以降ですね、したと思われる方が出ているということが現実になっているし。それから、あー、いろんな防護策を、おー、とって船内に入ったはずの、おー、政府職員の方が、あー、感染をしているということなので、えー、5日以降の、じょう、客室に留まりくださいということで、そして、14日間置けば大丈夫だという、その前提が崩れたということについては、何のお答えも頂いていません。えー、これが崩れたという前提で、だとすれば、今後のことについても、こういったやり方ではうまくいかないんだなということを前提に組み立てなきゃいけないのにそのこと自体を認めないで、いまだに言い訳をされているということではなかなか今後の対応策について信頼しろという方が難しいんだと思いますが」
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YesかNoで答えられる質問にもゼロ回答
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