また、そもそも少子化の根本要因として、子を持つことに対する考え方の多様化に言及する声もあった。「女性も男性も生き方は多様化してるし、晩婚化は当たり前になっている」「誰にでも当てはまるようにルール化できる問題ではない」などだ。
そもそも子を持つことを希望しない人に対して強制するような話ではないことは大前提であるが、現在子育てをしている人や将来子を持ちたいと思っている人が子育てに関してポジティブな思いを抱いていない中では、「子を持ちたい」と思える人が減っていくのは自然なことではないだろうか。
多様な考え方があることは踏まえた上で、少なくとも少子化を解決すべき社会問題として捉えている政府は、子育てに関してポジティブな選択ができるように政策を工夫する必要があるだろう。
今回の調査結果を踏まえ、しゅふJOB総研所長の川上敬太郎氏は「この3項目(『子育てと両立しやすい仕事が少ない』『子育てにお金がかかり過ぎる』『子育ての負担が女性に偏っている』)は密接に関連している面があります。子育てと両立しやすい仕事が見つかれば、その分の収入を子育て関連の費用に充てることができます。生活のために夫婦で十分な収入を得る体制をとるためには、子育ての負担が女性に偏っていては無理が生じます」とコメントしている。
少子化の問題は、多数の社会問題との関連が強いと考える。男性・女性問わず働き方をどう変えていくのか、経済格差をどう解決していくのか。それらが動き始めて、やっと子育て環境は変化するのではないだろうか。
私自身、子育てを考える年齢ではあるものの、周囲の子育て状況や社会の風潮を見るに、とにかく「子育ては大変だ」という印象を強く持ってしまう。安定した雇用や社会保障、子育てに対する社会の前向きな支援などがあって初めて、「子どもを産もうかな」と思えるものだ。少子化をどうにかせねば、と一点集中で捉えるのではなく、政策によってその周辺環境にアプローチするところから、始めるべきだと考える。
<文/太田冴>