一方、
医療制度については同じヨーロッパでも少し違いがあるようだ。
「ポーランドでは健康面はもちろん、
子育てに関するくだらない質問でも、その日のうちに予約して小児科医に会うことができる。国民健康保険が適用されて
料金は無料。ところが姉が住んでるオランダでは、まず総合的な医者に診てもらってから小児科医に行くか、チャットでしか話を聞いてくれない。
スピード感は国による」
国民皆保険のある日本は他国に比べても、福祉は充実しているほうだ。
社会福祉にまわすという名目で増税が行われただけに、今後はさらに子育て支援に期待したいところ。というか、そうあって然るべきだ。
続いてインフラ面だが、こちらの環境は日本とは段違いだ。
「バスとか路面電車みたいな
公共の交通機関にはベビーカー用の席があるし、いつも
乗るときは誰かが助けてくれる。電車でも路線によっては
子連れ用の車両があって、そこでは子どもが泣いていても他の乗客には注意する権利がない。レストランでもベビーチェアとか子ども用のメニュー、キッズスペースとか授乳室のあるところが多いね」
もちろん、そういったインフラが整っているからといって、すべての人が子どもが優しいわけではない。ただ、
論争が起きても、子連れの家族を応援する声のほうが大きいことは確かだ。
「(ポーランド西部の都市)ポズナンで、子連れの客がレストランを散らかして帰ったことがあって、お店が
『6歳以下お断り』って張り紙を出したの。それで大騒ぎになって、有名人からも抗議が殺到。
国中から非難を浴びたことがあった」
保育園や幼稚園の建設に地域住民が抗議するようなことも、まず考えられないという。
「最近は
公園にも子どもの服を替えたり、授乳できる小屋を造ってるし、新しく開発される
住宅街とか集合住宅には必ず子ども用の広場がある。それに反対したり、場所とか遊びの内容を制限することもありえないと思う」
子どもたちの遊び場や親が安心して子どもを預けられる施設が非難を浴びる……。そんな不健全な環境では、より育児に対してのストレスや労力が増す。当然、少子化を助長することにもなりかねない。
後編では育児休暇、そして子育てに奮闘する親たちの赤裸々な愚痴を紹介する。
<取材・文/林 泰人>