ベネズエラは石油以外に金の産出国でもある。皮肉なことに、原油の埋蔵量は世界一、更に金、銅、ダイヤモンド、コルタン鉄などを産出する国が今、世界で超インフレで経済は破綻して極度の食料難、医薬品と医師の不足などから普通の生活さえできないとして500万人が国外に脱出しているという状態にある。
チャベスとマドゥロの二人の国家指導者のボリバル革命と称した社会主義改革を実現させようとし、結局独裁化してしまったの成れの果て現在の破綻したベネズエラだ。
資金難にあるマドゥロ政権は原油が制裁で思うように輸出できないとして、現在金を無秩序に採掘して密貿易で資金を稼いでいる。採掘される金の内の80トン(およそ4000億円)が密貿易によるものだとされている。その主要ルートは先ずトルコに送ってインゴットにした後ロシア、ヨルダン、アラブ首長国連邦、セーシェル諸島に送って捌いて資金にしている。
或いは、カリブ海のABC諸島のアルバ、ボナイレ、キュラソーのそれぞれの島を起点に中東、米国、ヨーロッパでインゴットにしたり、コロンビアとブラジルの国境を通過してインゴットにする先まで送る別ルートもあるのだそうだ。
オリノコ流域のアルコ・ミネロ地域での金の採掘はマドゥロ政権を支持する軍人がコントロールしてゲリラ組織コロンビア民族解放軍、解散したコロンビア革命軍の残党、更にハマスやヒズボラなどが発掘に金稼ぎに集まった労働者を使って酷使している。
ロシアも金の10億ドル(1080億円)を投じて採掘に出資していることも明らかになている。ロシアからの投資はマドゥロ政権を支える重要な要素になっている。
発掘は91%がコントロールなく採掘されている。マドゥロ政権そのものが資金欲しさから採掘のための規制も存在していない。金、銅、ダイヤモンド、コルタン鉄などが1900か所で無秩序に採掘が行われているという。そこをコントロールしているひとりがマドゥロの息子ニコラス・マドゥロ・ゲッラだ。(参照:「
prensa minera」)
採掘した金を労働者が盗もうものなら、そこを仕切るシンジケートのリーダーによって損傷を受けることは明白で、腕などが切断されたり殺害される場合もあるそうだ。少年でも12時間労働を強いられている。採掘現場では身体に有害な水銀に侵される場合もある。そしてマラリアに感染する危険性も高い。それが一度ではなく、何度も感染させられる場合も頻繁に起きているという。しかも、その薬を手に入れるのに2グラムの金に相当する100ドル近くの費用がかかってしまうのだ。(参照:「
Infobae」)
これらの鉱物資源の密売によって得た資金はマドゥロを囲む側近らが恩恵を受けるだけで軍人の大半は今も苦しい生活を余儀なくさせられている。今も彼らは軍の上層部からの脅威と恐れから忠誠を誓っているだけだ。それが永遠に続くわけではない
<文/白石和幸>