劣悪なコンビニの現状。規制の進まぬ理由は、「経産省の反対」<辰巳孝太郎氏>

コンビニ店内イメージ

photo by shutterstock

国会で「コンビニの闇」を追及してきた男、辰巳孝太郎

  昨年、東大阪のセブンイレブンのオーナーが二四時間営業に反対し、自主的に営業時間の短縮に踏み切ったことが大きく報道された。コンビニのオーナーたち が人手不足の中、過酷な労働を強いられている実態に注目が集まり、24時間営業や元旦営業の見直しなどが議論されるようになった。  私たちはコンビニが24時間・365日営業してい ることに慣れ、それを当然のことだと考えてしまって いる。しかし、その裏では多くの人たちが厳しい労働環境に置かれている。 私たちが当然と考えているものは、多くの犠牲の上に成り立っているのだ。  真正保守論壇誌『月刊日本 2020年3月号』では、こうしたコンビニエンス業界が抱える問題について、「コンビニの闇」と題した特集を組んでいる。  前回、明石順平氏のインタビューでも登場した「コンビニ会計」や「フランチャイズ規制」について、どのように国会で議論されたのかを辰巳孝太郎氏が語っている。 月刊日本2020年3月号表紙

バイトの勤務時間を違法に切り捨てるセブン

―― 辰巳さんは国会でコンビニ問題を追及してきました。どのような問題意識からコンビニ問題を取り上げたのですか。 辰巳孝太郎(以下、辰巳):もともと私はセブンイレブンで働くアルバイトの待遇に関して問題意識を持っていました。セブンイレブン本社は「ストアコンピュータ」という独自の勤務管理システムを各店舗に使用させています。セブンの従業員たちは出勤時にこのコンピュータにバーコードをかざし、出勤時刻を記録します。これは「出勤スキャン時刻」と呼ばれ、1分単位の正確な時刻です。ところが、「始業時刻」としては「出勤スキャン時刻」から15分未満を切り上げたものが自動入力されていたのです。たとえば、午前2時51分にバーコードをかざした場合、始業時刻は午前3時になります。逆に終業時刻は15分未満が切り捨てられ、午前9時7分に退勤したとしても、終業時刻は午前9時と記録されていました。  そのため、このシステムを用いると、始業時と終業時にそれぞれ最大14分ずつ労働時間が切り捨てられることになります。その分、賃金は奪われるわけです。年間にすれば相当の額になります。これは労働基準法違反であり、まさに「賃金泥棒」です。  私はこの質問をするにあたって、セブンのオーナーさんたちから話をうかがいました。そうしたところ、オーナーの状況も非常に深刻だということがわかりました。オーナーさんの中には「確かに勤務時間の切り捨ては問題だが、きちんとアルバイト料を払っていたら利益が上がらない」といった声もありました。  オーナーは労働者ではなく個人事業主であるため、労働者としての保護を受けることができません。また、コンビニ本部と各店舗は元請け・下請けの関係ではないため、下請法の保護もありません。しかも、本部とオーナーの間には圧倒的な力の差があり、本部が契約更新を拒否すれば、経営を続けられなくなります。こうした中で、オーナーは本部からひどい搾取を受けていたのです。フランチャイズというシステムのもと、「むき出しの搾取」がまかり通っていると言ってもいいでしょう。  もっとも、アルバイトやオーナーだけでなく、コンビニ本部の社員も苦しい立場に置かれています。特にセブンイレブンは軍隊方式と言われており、社員たちは追い込まれていると思います。最近、セブン本部の社員がオーナーに無断で商品を発注したことが問題になりましたが、これは社員たちに過酷なノルマが課せられているからです。これまではオーナーやアルバイトの問題が目立ち、本部の社員の実態はあまり注目されてきませんでしたが、今後は様々な問題が表に出てくると思います。
次のページ 
与党にもコンビニ問題に共感する議員はいる
1
2


月刊日本2020年3月号

【特集1】世界激震!新型コロナウイルスの猛威
【特集2】国家の私物化、隠蔽・改竄・安倍政権 安倍総理よ恥を知れ!
【特集3】コンビニの闇
【特集4】ゴーン海外逃亡暴走を続ける特捜部
特別インタビュー・共産党への偏見を捨てよ 慶應大学名誉教授弁護士・弘中惇一郎


バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会