タクシーの座席に設置されたタブレットに表示された文字
先日、外国人の友人と会っていたときのこと。「これ見たことある?」と向けられたスマホ画面に映っていたのは、タクシーの座席についているモニター(タブレット)の写真だった。表示されていたのは、気に留めなければそのまま見過ごしてしまいそうな英語の注意書き。筆者の友人が思わず写真を撮ってしまった、その内容は次のようなものだ。
“このタクシーのタブレットはタブレットのフロントカメラが集めた画像による顔認識システムを使用しています。画像のデータはもっとも最適化されたコンテンツをお届けするため、性別を判断するよう使われています。
性別の判断は広告プログラム開始時に起動し、判断の工程が終わり次第、画像データは削除されます。タブレットもサーバーもデータを記録することはありません“
要は
乗客の顔を取り込んで、性別に合わせた広告が流れる……ということだ。
インターネットの検索やショッピングの履歴、SNSのアクティビティのデータが収集され、広告の内容に反映されているのは、今や誰もが知るところだろう。
しかし、前もって断ってあるとはいえ、そういったツールとは違い、今回のケースでは事前に何か利用規約などで「同意」しているわけではない。一方的にデータを搾取されているうえ、モニターを見ていなければ、その事実すら知らされないままだ。
興味がなければ「電源をオフにしてください」とも書いてあるが、放っておけば「勝手に」広告を押しつけてくることには変わりない。
この表示が気になったという友人に話を聞くと、次のような理由で違和感を覚えたという。
「2つ問題があって、簡単に言うと
プライバシーとジェンダー。今はあらゆるところでユーザーの個人情報が集められているけど、
乗客の顔を無断で撮影するのは行き過ぎだと思う。それもサービス向上のためじゃなくて、タクシーとは関係ないコマーシャルを流すためなんだから、勝手すぎるね。これを放置していたら、いずれ人を監視することにもつながりかねないと思う」(アメリカ人・男性・38歳)
また、ジェンダーに関しては、過度に性を強調した宇崎ちゃんやラブライブのポスターが公共の場に提示されたことで、そうした広告が次々と炎上している。
今回のタクシーの件についても、外国人に話し聞くと性別によって表示される広告が異なるという点に、疑問を抱いたという意見が出た。
「性別によって広告を変えるのは意味不明。『男性、女性ならこういうものが好きだろう』って偏見をもとにしているわけでしょう? なんの根拠もないし、性別とセクシュアリティが一致しない人だって沢山いるのに。
すごく狭いジェンダー観を押しつけることになるし、馬鹿らしい」(ノルウェー人・女性・34歳)