日本全国のパチンコ店では、月に1回、来店した客に粗品を渡しても良いというルールがある。ひと昔前までは、業界内で特にルール化されておらず、来店客に毎日ジュースを配ったり、遊技中の客にお菓子を配ったり、過剰ともいえるサービス合戦が加熱した時期があったが、これが「客の射幸性を煽る」という理由でルール化された。
今では月に1回任意の日(年末年始等の特別な時期は例外もあり)に、200円程度までのものであれば、お客様へのサービスとして無料景品を渡してよいということになっている。パチンコ業界ではこの景品のことを「
総付景品」と呼んでいる。これは集客ツールとして、パチンコ店にとっては大事な広告手段である。
パチンコ店に出入りする人であれば、高級箱ティッシュや地方の特産食料品等を店舗スタッフが配っているのを見た事がある人もいるだろう。
さて、2月14日。世はバレンタインデー。
多くのパチンコ店では、月に1回の総付景品の配布日をこの日に定め、店舗の女性スタッフらからお客様にチョコレートを渡すということが恒例化している。勿論、男性ばかりに渡すのではなく、女性客にも渡す。世の中のイベントごとに乗っかるのは、客商売であればマーケテイングの常識であり、これはこれで素晴らしいサービスだと思う。
そのような時節、チョコレートよりも、
世の中の皆が欲しいと思うアレを配ったパチンコ店が現れた。
COVID-19の影響が騒がれる中、パチンコ店が配ったのは……
そのパチンコ店が総付景品としてお客様に配布したのが、新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により品切れ状態が続く「マスク」である。配ったのは愛知県一宮市に本社を置く
株式会社星和で、愛知県と東京都に「
ミカド」の屋号で6店舗のパチンコ店を展開している。
「ミカド」では、2月15日の土曜日、6店舗全店でマスク(5枚1組)を無料配布したのだ。語弊のないように明記しておくと、マスクの欠乏が叫ばれるなか、このパチンコ店が独自のルートで大量入手した訳ではない。
同社は「災害時支援協定企業」として、災害時に必要な物品を予め備蓄しており、新型コロナウィルスの国内感染が広がり、マスクの需要が急激に高まるなか、この備蓄していたマスクを全店で配布することを決めたのだ。
バレンタインデーにチョコを配るのではなく、その翌日にマスクを配布した「ミカド」のパチンコ店に対する業界内外の反響は小さくない。ミカド全店のツイートや店舗スタッフのツイートは大きく拡散され、全店において備蓄のマスクをすべて配布した。このマスクの配布は、
パチンコ店で遊技している客だけではなく、遊技をしない地域の人たちにも配布することを謳っており、同社の取り組みは地域におけるパチンコ店の在り方に一石を投じている。