Zeebra氏
今の渋谷は金曜日の夜すら静かだ。
「渋谷で明け方まで開いているのは駅周辺の居酒屋チェーンかクラブ、一部のバーくらい。ちょっと歩けばもう真っ暗ですよ」
そう語るのは宮下公園近くにあるバーのママだ。急増した外国人観光客も、終電を過ぎた頃にはほぼいなくなり、かつてのギャルやチーマーのような「道端でたむろする若者たち」も減ったという。
いったい、渋谷に何が起きたのか? HipHop界のレジェンドであり、渋谷区ナイト観光大使のZeebra氏に聞いた。
「我々の世代は『とりあえず渋谷に行けば何かある』という感覚がありましたよね。渋谷区長の長谷部健さんと対談したとき、彼から『渋谷で生まれた文化はすべてストリートから始まった』というパンチラインが出て(笑)、でも、確かにそうだったな、と」
もともとの渋谷の機能は変わってない。夜の文化を世界に!(Zeebra)
日中に数多くいる外国人観光客が、夜には渋谷からいなくなってしまうのは、宿泊施設の少なさによるものだという声も聞かれた
この変化はSNSで人と繋がる時代になったから、とZeebra氏は分析する。だが、決して渋谷の魅力が衰えたわけではない。
「風営法の改正で、ナイトクラブが明け方までオープン可能に。店内の明るさの規制などがあるものの、それが逆に’90年代の“怖い渋谷”から“クリーンな渋谷”、“来やすい街”へと印象を変えました」
Zeebra氏
さらにZeebra氏は渋谷のクリーン化の理由として、若者の意識の変化を挙げる。
「’90年代のチーマーと現在のギャル男も、見た目はいわゆる“不良”スタイルの若者なのは変わらない。しかし、持っている感覚は逆。僕と同じ渋谷区観光大使の『あっくん』というギャル男くんは、毎年ハロウィーンのときにゴミ拾いをしてくれます。こんなの、昔では考えられない(笑)。“行き場がないから行っていた渋谷”から“自分たちの街だから守っていきたい渋谷”へと、若者の街への意識が変わったのでしょう」
一方で、「あまり『渋谷はクリーンになった』って言わないで、とも思う人もいる(笑)。犯罪などは論外ですが、ちょっとした夜のスリルがあってもいい」と笑うZeebra氏。渋谷のナイトカルチャーを世界に広めるために改善すべき点は交通機関だという。
「東京オリンピック期間には終電を2時間遅らせるというニュースもありました。週末だけでもこれを続けてもらえれば、飲食店も長く開けられ、経済も回る。これは今後、ナイトタイムエコノミー議連でもどんどん提案していきます」
【Zeebra氏】
’95年、「キングギドラ」のフロントマンとしてデビュー。ネットラジオ局「WREP」の立ち上げや「フリースタイルダンジョン」のオーガナイザーなど活動は多岐にわたる
<取材・文/週刊SPA!編集部>