「産後ケア」より「家族ケア」。八王子の助産院が目指す、夫婦が一緒に子育てする社会。

産後ケアを通じて、夫婦が対話を持って欲しい

 青木院長が訴えるのは、「夫婦の対話」だ。たとえば妻が「夫は家事をしてくれなくて不満」と言うとする。しかし本当の不満は「夫が育児に大変なときに側にいてくれないこと」かもしれない。本心を伝えるための時間的・精神的な余裕がない、もしくはパートナーの協力を始めから諦めてしまうと、夫婦のコミュニケーション不全が起こる。  青木院長の夫で、ともこさんちの運営に関わる孝則さんは「パパの立場」としてママたちの集まりに参加することがある。 「パパたちへの不満が話題に上った時には、『きっと、こう思っているのだと思います』と僕の視点をお話しします。  日頃から対話の機会が少ないと、お互いが今どんな状況なのかを把握できなくなります。この状態を放置しておくと夫婦が理解しあえなくなり、すれ違いが起こってしまうのです。  そうならないためにも、夫婦で気持ちを話し合う時間が必要です。私たちが行う産後ケアによって夫婦がコミュニケーションを見直していただけたら嬉しいです」  青木院長もこう続ける。 「産後の女性は意味もなくイライラして、攻撃的になることがあります。赤ちゃんは寝ないし、おっぱいを上手に飲めないし、自分の体も疲れている。でも旦那さんが産後女性の状態を『そんなものだからね』と理解してくれたら、夫婦仲が修復不能なレベルまでこじれなくてすみます」  産後の女性は不安を感じやすい。特に初めての子どもの場合はなおさらだ。泣き止まなくて困った時の対処法を知りたがったり、与えるべきミルクの量がわからなかったりして青木院長のもとへ相談に訪れる人も多い。そんなママたちの状態をパパが知っていればパパの行動は自然と妻を思いやるものになり、妻の負担を和らげることができる。

産後一年では足りない。子どもが10歳までケアをしていきたい

 母子健康法の改正では、産後ケア事業の対象者を「出産後一年未満の母子」としている。以前は「産後3ヶ月未満」や「産後5ヶ月未満」など自治体によって対象者が異なっていたが、法改正に伴って延長かつ統一された。青木院長も一定の評価をしつつも、「1年では足りない。お子さんが10歳になるまで実施したい」と話す。こう思う背景には、院長の子育て体験がある。 「私が子育てで一番大変だと感じたのが、子どもが小学生に入った時でした。保育園では連絡帳やお迎え時に保育士さんが子どもの様子を細かく教えてくれますが、小学校ではそうはいきません。学校が私に連絡をするのは、子どもが学校で何か問題を起こした時です。先生から『お子さんがお友達とトラブルを起こしたので、相手の親御さんに謝ってください』と言われても状況がわからない。だからどう対応すればいいかわかりません。  小学生低学年であれば身の回りのことをある程度自分でできるので、乳幼児のお世話よりは楽な面もあります。でも子育ての大変さは、お子さんの年齢によって変わってくるので『◯歳までサポートしたら、もう大丈夫だよね』というわけにはいかない。継続した支援が必要です。  ちなみに10歳までとしたのは、その年齢なら分別がかなりついていますし、思春期を控え自立に向かい始める時期だからです」  「ともこさんち」が産後ケアで大切にしていることは、育児で正解を押し付けないことだ。イヤイヤ期の対応にしても様々なアプローチがある。感情的になって会話にならない子どもから少し離れ親が冷静になるのもよいし、別の何かに関心を向けさせるのもありだ。子どもの性格や好みによって適切な対応は異なるのが普通なのだ。  青木院長は、「育児に正解はありません。このやり方が正しいと押し付けるのではなく、ご家族やお子さんの状態に合ったやり方を見つけるお手伝いをしていきたいです。『家族みんなが笑顔になれる場所』を目指し、これからも産後ケアに取り組んでいきます」と笑顔で話してくれた。 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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