病院や保育園、オススメのお店情報を住民同士がシェア。ご近所SNS「マチマチ」が作る「つながりのある社会」

町会の活動を知り、好感度が上がった

 お二人のマチマチユーザーに使い方やメリットを聞いた。  吉田さん(仮名、30代)は、「地元に住んでいる人だからこそ知っている情報を知れる」ことにメリットを感じている。まさにご近所SNSの強みだろう。  また自身が保活で苦労した経験があることから、保育に関する情報を積極的に発信している。 「子どもを預けている保育園について思うことを書いています。保育園でどんな保育をしているか、保育士さんがどんな対応をしているかはインターネットではなかなか検索できません。だから自分が発信しようと思いました」  また前述の田中さん(仮名、30代女性)も、「地域ごとの情報が入手できるのが便利です」と話す。 「Facebookでもイベント機能はありますが、開催地を見ると遠かったりして結局子連れでは行けなかったりします。マチマチで近所のイベントが見れる機能がありますが、子育て世代には助かります。私はどちらかというと近所のイベント情報を発信する側なのですが、近所のママ友からはすこぶる好評です」  またマチマチを利用する中で、町会に対する印象が変わったという。 「マチマチを使うまでは、お祭り以外の町会の活動はあまり見えてこなかったのですが、マチマチで町会が色々な活動をしていることを知り、町会に対しての好感度が上がりました」 マチマチによって地域への繋がりを意識するようになったようだ。

紙媒体よりもネットの方が広く、たくさんの人に情報を届けられる

 マチマチのユーザー数は着実に増えている。2018年初めには20万人に満たなかったが、2019年時点では160万人目前にまで迫る。  マチマチはどのようにして生まれたのか。代表の六人部さんが挙げたのが、「地域間のコミュニーションにネットが活用しきれていないことへの違和感」だった。  飲み会店探しや賃貸物件の空き状況のほか、就活でもネットを使うのが当たり前だ。しかし地域での情報伝達手段は掲示板やチラシ、回覧板というケースが今でも根強い。ネットが発達した現代には合わなくなっている。  また第一子が生まれたことも転機となった。 「親になったことで『どの小児科がいいのか』『どの公園だと遊ばせやすいのか』など、”地元の情報”が気になるようになりました。でも意外と情報が少なくて、どうやって選べばいいかがわかりません。 結局は妻の知人からの口コミで解決できましたが、不便だなと思いました。僕もやろうと思えば公園にいるパパさんやママさんに話しかけることはできますが、相当に勇気がいります(苦笑) そんなストレスを感じなくても、ネット経由で地域の情報を得られる『地域のデジタルインフラ』をつくれないかを考え始めました」

全国25の自治体と連携。地域住民への情報発信をサポート

 マチマチは全国25の自治体とタイアップし、地域住民への情報提供ツールとしての機能を果たしている。首都圏では渋谷区や目黒区、神奈川県川崎市、横浜市といった政令指定都市と連携。西日本では神戸市や佐世保市がマチマチの利用者だ。  多くの自治体は、若年層の流出や高齢化に伴う地域活動の消極化に悩んでいる。これにより地域の繋がりが弱まり、活気を失ってしまう。とはいえ、地域コミュニティを主導する最大のプレイヤーは自治体だ。マチマチは自治体と住民のコミュニケーションをサポートできないかを考えた。  たとえば、イベントのお知らせを自治体がマチマチを利用して発信すれば、チラシでは届かなった層に情報が行き渡る可能性がある。これまで地域活動に参加してこなかった人は、興味がないわけではなく、活動の内容を知らないだけかもしれない。前述の田中さんのように、マチマチ経由で活動の詳細を知り、関心を持つ人も出てくる。そうなれば、いろんな人を地域のコミュニティーに巻き込んでいける。  このようにマチマチは、自治体と住民間のコミュニケーションにも一役買っている。ユーザーとして感想を述べた吉田さんも「区の発信だから信頼できる」と話していた。  六人部さんは、「個人的な感覚なのですが、ご近所のように物理的に近くにいる人たちの繋がりを求める人が増えているように思います。マチマチを通じて、当社が掲げる『ひらかれた、つながりのある地域社会をつくる』という目標の実現に向けて取り組んでいきます」と意気込みを語ってくれた。 <取材・文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。
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