タイの歯科医を呆れさせた、恐るべき日本の歯科の非常識

痛みは一切なく、寝ているうちに治療が終わったタイの歯科

 こうして2014年に、悲願のバンコク歯科行きが実現した。すでにX線などの資料もメールで送信しており、その日のうちにRCTを開始できるよう専門医も用意してくれていた。  おそらく30歳手前くらいの若手女性担当医は、顕微鏡で患部を見て、フッと鼻で笑った。  「これは化膿していますね。すぐに治療を始めましょう」  「なんで化膿しているんですかね?」  「前担当された方が失敗したということでしょう」  専門医の目から見れば、日本で受けた杜撰なRCTは嘲笑するしかなかったに違いない。  そこからは粛々とRCTがすすめられた。「メス」という単語すら出て来ることがなかった。顕微鏡を使う通常のRCTで十分に対応できる範囲だったということだ。  「はい、治療が終わりましたよ。あなた、治療中寝ていましたね。つまり痛みが全くなかったということで、非常によい兆候です」  そう言われてみると、RCTにつきものの激痛が一切なかった。文字通り、寝ている間に終わってしまった。  「来週月曜に、もう一度来てくださいね」    そして、もう一度月曜に中をのぞき、何事か作業して治療は完了してしまった。あの半年にわたる痛みと徒労の日々は何だったのか。

日本の現実を告げると、呆然としていたタイの歯科医

 後日、別のタイ人歯科医と昼食を共にする機会があった。  「日本ってね、歯科治療を個室でやらないところが少なくないんですよ」と言うと、先方は絶句した。  続けて「諸々の器材も滅菌処理しないで使い回しする歯科医さえいます」(編集部注:薬液消毒、洗浄は行っている。滅菌処理しない歯科医が存在するのは主に歯を削るドリルやその持ち手であるハンドピースという箇所。参照: 歯を削るドリル「使い回しが36%」の衝撃事実/AERA,東洋経済オンライン)と言うと、絶句に加え、目が大きく見開かれた。  「RCTのとき、ラバーダムや顕微鏡を使う歯科医はほとんどいません」と言うと、今度はあまりの衝撃に唖然として、声も出ない。  もはや、筆者の口から出る言葉を一言も信用できない様子だった。  「日本の常識は世界の非常識」あまりにも言い古された言葉だが、歯科業界にこそ最も当てはまるのが悲しい現実である。  次回は、歯科の基本中の基本「消毒・滅菌」について掘り下げていく。
 ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。
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