「送料」は「無料」じゃない! 「送料無料」を喧伝する裏に潜む運送業軽視

再配達も本来なら無料ではない

 話を運送に戻そう。  物流業界は現在、「無料サービス」の宝庫と化している。工場や物流センターなどまでの一次輸送を担うドライバーの多くが「荷待ち」や「荷物の積み降ろし」といった、荷主への無料サービスを経験している。  そして二次輸送では、エンドユーザーである我々消費者に対して、「送料」と並び「再配達」や「時間帯指定配送」なども無料となっている。  が、当然これらにも立派な人件費や燃料がかかっている。  とりわけ再配達は、全配達業務に占める割合が16%(都市部では18%)にものぼる。これは年間9万人分の労働力、1.8億時間の労働時間、2600億円もの費用に相当する計算だ。  再配達のトラックから排出されるCO2の量も、年間でおよそ42万トン(JR山手線の内側の面積約2.5倍のスギ林が吸収する量)と環境にも大変悪い。  会議の時間は守るのに自分で指定した配達日や時間を守らず、平気な顔して再配達を繰り返すのは、サービスが無料だと思っている何よりもの証拠であり、客の神化以外の何モノでもない。  「無料サービス」は黙って受け入れておいて、その無料サービスの時間帯指定に「時間通りに来ない」「5~7時指定で5時ちょうどに来るな」といったクレームに対し、物流はこれ以上どうしろというのか。

「送料無料」について再考を

 余談になるが、世界最先端の街とも言われるニューヨークは、利便性でいうと大変に住みづらい。各駅にエレベーターやエスカレーターがあるわけではなく、配達事情も大変悪い。ファストフードでスマイルになるのは、むしろ客のほう。便利な生活をするためには、とにかく「カネ」が要り、サービスが無料ではないことを痛感した。  そんな中、コンビニやファミレスの24時間の取り止め、スーパーのレジ袋有料化に、予約キャンセルの罰金制、配送においては「置き配」の普及など、昨今日本でも一部で「顧客第一主義からの脱却」が広まりつつある。  この風潮には賛否あるものの、需要と供給を埋めている多くの功労者たちの存在を感じるいい機会になると個人的には思う。  同じように、物流に対しても「送料無料」表記の見直しや、「無料サービス」に対する消費者意識が少しずつでも高まっていけば、過酷な労働を強いられるドライバーのモチベーションも大きく変わるはずだ。  今回の送料無料化騒動。世間にトラックドライバーの過酷な環境を知ってもらう1つのきっかけになってほしいと切に願う。 <取材・文/橋本愛喜>
フリーライター。元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許取得後、トラックで200社以上のモノづくりの現場を訪問。ブルーカラーの労働環境問題、ジェンダー、災害対策、文化差異などを中心に執筆。各メディア出演や全国での講演活動も行う。著書に『トラックドライバーにも言わせて』(新潮新書) Twitterは@AikiHashimoto
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