山添議員は問題の文書の作成に関わった組織である
内閣官房・大西証史内閣審議官に対して、「
安倍事務所の推薦分も開示請求の対象となる認識はあったか」と質問。大西審議官の答弁は要領を得ない上に二転三転したものの最終的には「
認識はあった」という趣旨の答弁を引き出した。こうして外堀を埋めた後、山添議員は本丸の安倍総理に質問。その質疑は以下の通り。
山添議員:「つまり、(桜を見る会の名簿が開示請求の対象になるという)趣旨は(安倍事務所に)伝わっているんですよ。総理、いかがですか?」
安倍総理:「
ですが、趣旨に、趣旨については
伝わったという話を致しましたが、(
青信号)
こっ、こっ、
このですね、この、
いわば、参議院の、
が、書いている、ですね、このー、
『行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいて名簿全体を公開されることもあります』ということでは来ていないということは申し上げたわけであります。
で、そもそもですね、えー、
この、この、おー、
最初の、何か、えー、連絡、うー、
事務連絡で書いてあることもですね、えー、
開示請求の対象とされることもありますとこう書いてあるわけであります。対象とされることもありますということとですね、えー、開示、えー、あー、
名簿自体を公開されるってこととは、これ、えー、請求の対象と、対象ですから、対象とされたということでありますから、そこは、まあ、
違うということだと思います。(
赤信号)
いずれにいたしましてもですね、いずれにいたしましても、いわば、あー、
そういう方をですね、選んでくださいということについては、それは当然来ているということは先ほども申し上げた、その趣旨については申し上げている
通りであります。(
赤信号)」
見ての通り、
安倍総理の答弁は全体的に意味不明で、いったい
何を言いたかったのか理解すること自体が困難だ。答弁に出てくる言葉を紐解いて、なんとか分析を試みたい。
1段落目は、桜を見る会の名簿が開示請求の対象になるという趣旨が安倍事務所に伝わっていることを認めているようにも読みとれるため、
青信号とした。だが、2段落目以降では、一転して否定しているようにも見えるため、この
全4段落の安倍総理の答弁の中ですら整合がとれてないように思える。
直後の
2段落目では、安倍総理は参議院の内部資料の文言を読み上げて、この文言と一字一句同じ連絡は来ていないという意味合いのことを言っているのではないか。「ご飯論法」に通じる誤魔化し方で以下のように論点をすり替えており、
赤信号とした。
【質問】趣旨が伝わったか
↓ すり替え
【回答】趣旨が文書と全く同じ文言で伝わったか
3段落目は、内閣府の文書に書かれた「開示請求対象になること」と参議院自民党の内部資料に書かれた「名簿が公開されること」は違うということを熱弁されていると思われるが、
質問と全く無関係であり、
赤信号とした。そもそも、なぜこのような話をしたのか筆者には最後まで理解できなかった。
4段落目は、そういう方(=桜を見る会に呼ぶに相応しい方)を選んでくださいという連絡は来ているという意味合いのことをおそらく述べており、以下のように論点をすり替えていると判断し、
赤信号とした。
【質問】開示請求対象となる趣旨が伝わったか
↓ すり替え
【回答】相応しい人を選ぶ趣旨が伝わったか
この答弁の後、山添議員が「
ちょっとはっきり趣旨が分かりませんけども」と述べている通り、
安倍総理の答弁は徹頭徹尾、意味不明であった。
「切り貼り」でまとも答弁したかのように報じるメディア
今回の質疑で明らかになったことを強いて挙げるとすれば、
「政府および自民党は名簿公開の可能性を事前に認識していたことが明らかになり、個人情報は公開できないという従来の総理答弁の根拠が崩れた」という山添議員の指摘に対して、安倍総理は質問に全く回答しなかったという事実だ。
だが、残念ながらこの事実を多くの国民が知ることはないだろう。これまで同様に
NHKを始めとする国内メディアのニュース番組では神業的な映像の切り貼り編集によって、あたかも安倍総理が理路整然と質問に回答したかのような映像を流すことが予想されるからだ。
だが、この質疑をノーカットで視聴すれば、事実はおのずと見えてくるだろう。この場面に限らず、当日の質疑では答弁者側には大きな混乱が見られ、質問に回答することが困難なほどに追い詰められていた。全編は
Youtube で字幕付きで視聴できるため、ご確認頂きたい。(本記事で取り上げた場面は動画の
14:20~)
<文・図版作成/犬飼淳>