タイでは今年に入った1月1日から、全土の小売店約2.5万店舗が一斉にレジ袋の提供を停止した。つまり、コンビニエンスストアなどで買いものをしたときに無料で入れてくれる袋がなくなったのだ。
この取り組みはタイ小売業協会が実施するもので、加盟する小売業者がプラスチック製のレジ袋の無償提供を取りやめている。コンビニではセブンイレブンやファミリーマート、スーパーではタイ最大チェーンのビッグCなどが行っており、実質的にタイ全土でレジ袋がなくなったようなものだ。
日本同様、海岸はこのようにペットボトルやプラスチック製品のゴミが大量に漂着している
タイでは近年、プラスチック製品などによる海洋汚染が深刻化しており、海洋生物がこれらの製品を飲み込んでしまったり、身体の一部に引っかかって死亡している案件が増加している。これらの環境問題をタイ政府も取り上げており、小売業協会に加盟する43社が無料提供を取りやめることを決定した。世界的にレジ袋の有償化は珍しくないが、タイの場合は一斉に実施したので、規模の大きな活動として注目される。
「何に入れて持ち帰るか」を競うようにSNSにアップ
タイ国民はこの活動を支持する人が大半ではあるが、これまで習慣的に受け取っていたものが急になくなり、戸惑っている人も少なくない。筆者もそのうちのひとりで、このニュースは昨年9月ごろには発表されていたことから知ってはいたものの、いざ始まると買ったものをどう持ち帰るかで途方に暮れることもしばしばだ。実施されて半月以上が過ぎた今も、レジの前で困ってしまうことがある。
ただ、現状はまだこれまでのレジ袋が残っている小売店も少なくない。そのため、コンビニなどでは在庫があるうちは買いもの客に袋が必要かを訊ね、ほしい人には無料で提供しているところもある。
タイにも進出しているIKEAの袋でスーパーに買いものに来たタイ人女性
ビッグCはレジ係が商品を袋に詰めてくれたが、その仕事もどうやらなくなったようだ
また、この困惑を楽しんでいる人たちも少なからずいるようだ。タイもスマートフォンの普及率が高く、スマホの普及率以上にSNSのアカウント開設が多い。いわゆるインスタ映えなどもタイ人の国民性に非常に合っていて、多くの人があらゆる場所でインパクトのある画像撮影を狙っている。
今回のレジ袋がなくなったことで一部のタイ人の間ではなにに商品を入れて持ち帰るかを競うようにSNSにアップすることが話題になった。魚の干物を干す網やバケツ、鳥かごなど、あらゆる「入れ物」に商品を入れて持ち帰る様子がネットに上がっている。中にはゴザをレジ前で広げて商品を包んでいく動画をアップした芸能人もいて、案外タイ人は戸惑いながらも楽しんでいるようである。
ちなみに、無償提供の袋はなくなったものの、エコバッグなどは販売されている。スーパーのビッグCではレジ横にエコバッグが最大サイズでも5バーツ程度で売られている。日本円で18円程度の金額だ。サイズはこれまでのレジ袋と同じくらいのものなので、買いもの量によっては数枚必要なものの、袋を忘れても対処はできそうだ。
レジ横に売られていたエコバッグ