photo by Anthony92931
昨年12月4日にアメリカのファストフードチェーンであるTaco Bell(タコ・ベル)が2022年までに米国内で2000店舗の拡大、さらには1300店舗の海外展開を視野に入れていることを発表し、その中に日本が含まれていることを今年になってからWeb系のニュースメディアが「タコ・ベル日本に再上陸か」として取り上げ、ネットユーザーを中心に話題になっている。
タコ・ベルはブリトーやタコスなどいわゆるアメリカ風にアレンジされたメキシコ料理「テックスメックス」料理を出すファストフードチェーンとして知られ、現在は全米で約6000店舗を有し、週辺り3600万人の来客があるという巨大ファストフードチェーンだ。
日本でもかつては大阪や名古屋に店舗があったが、現在は撤退。アジア圏では韓国やシンガポール、フィリピンなどに数店舗擁しているだけだ。
しかし、日本でもアメリカ在住者やメキシコ料理好きなどを中心にファンも多く、日本での出店を待ち望んでいるファンは多かった。そんな中、この世界戦略の発表は、確かに日本再上陸への期待感を増す発表だったかもしれない。ちなみに、筆者もロサンゼルス在住時にはタコベルをしばしば食べていたので、日本でも食べたいと思っていた内の一人である。
事業拡張計画を発表するタコ・ベルのサイト
そんなタコ・ベルだが、「食の安全」という観点から言うとしばしば微妙なトラブルに見舞われている。
例えば、2000年には遺伝子組み換えトウモロコシ「スターリンク」が同社ブランドのタコ・シェル(タコスの皮)に使用され、リコール騒ぎを起こしている。もっともこれは、クラフト社によってタコベルブランドで販売されたタコ・シェルで、タコベルは巻き込まれた形ではあるのだが……。スターリンクは遺伝子組み換えにより殺虫性のたんぱく質(Cry9C)を産生する遺伝子が挿入されており、「アレルギーの原因になる恐れがある」として、米国でも厳しく食品用への混入が検査されていた(※この抽出検査は2008年4月まで続けられた)種類のトウモロコシで、米国でも飼料用及び工業用のみで限定されているだけだった。
さらに2011年には同社のビーフタコスで使われるタコミートフィリングについて、独自に食品分析専門家に成分を解析させたところ牛肉の割合が35%しかなかったとして、「ビーフタコス」という名前は食品偽装だとして集団訴訟を起こされている。この訴訟に対し、同社のCEOグレッグ・クリードは88%が牛肉であると強調し反論しているが、タコベルが表示している成分表示ラベルを見るだけでもフィリングには牛肉以外にも水、分離したオーツ麦、潮、などから凝固防止剤、リン酸ナトリウム、二酸化ケイ素などが含まれていることがわかる。ちなみに二酸化ケイ素は日本でも使用が認められた食品添加物で、不溶性で体外に排出されるため毒性はないとされているが、厚労省の告示によれば、母乳代替食品及び離乳食に使用してはならないと表記されているものだ。
また、一時期日本でも話題になった「ピンクスライム肉」(英国人料理研究家のジェイミー・オリバーによれば、屑肉をアンモニアに付けて洗浄して添加物で味を付けた物だという)についても、アメリカで問題化した際に「使用の中止」を公表している(つまり、それまでは使用していたということ)。
食品混入などが問題になっている昨今、「タコベル」再上陸の際にはしっかりと安全性を確保しつつ美味しいテックスメックスを提供してもらいたいものだ。
<取材・文/HBO取材班>