そのカジノが何故いま日本で開かれようとしているのか。
「リーマンショック後、カジノ業界はベガスやマカオも含めて全体的に苦しい。その中で日本は数少ないフロンティアの一つだ。日本にカジノを作るのは、
日本人のタンス預金を獲りたいからだ。日本のカジノは外国人が対象だと言われるが、実際のターゲットは日本人だ」
「アメリカでは2004年から都心にカジノを作り始めた。ニューオーリンズを皮切りに、ボルチモア、セントルイスと続いたが、
都心にカジノを作る狙いは地元住民のカネを獲ることだ」
横浜市などカジノ誘致に名乗りを上げた自治体は、街の活性化などのメリットを挙げている。
「我々は
客がカジノから出ないように、街に出ないように作っている。だから、カジノの恩恵が街に還元されるなんてことはありえない。あれば、我々の負けだ。シカゴやインディアナのカジノは周辺にガソリンスタンドが数軒あるだけ。客はカジノの中だけでギャンブル、宿泊、食事、買い物を済ませるから周りはスッカラカンだ」
実は、自治体が強調しているメリットはカジノ業界のプロパガンダなのだという。
「カジノ業界が自治体に進出する際は新聞、テレビ、ラジオ、インターネットを利用しながら、2年ほどかけて少しずつカジノ誘致の素晴らしさを広告する。税収増や雇用増の具体的数字を予想グラフにしてプレゼンも行う。そして市長や地元有志を抱き込み、住民の賛成が51%以上になれば勝ちだ。そうなれば、49%以下の反対派の住民が何を言おうがカジノはオープンできる」
実際にカジノで国や自治体は儲かるのか。政府の方針では、カジノ収益の分配率は国15%、自治体15%、事業者70%だというが。
「カジノは産業の一つとしてネイティブの居住地区に作られることが多いが、その場合、収益の配分は自治体70%、事業者30%くらい。
日本では数字が逆転しているから驚いた」
予想通りに収益が上がらなかったらどうなるのか。今のところ、IRのカジノは1店舗、IR全体のうち3%の面積とされているが。
「蓋を開けて
収益が上がらなかった場合はカジノの面積を5%、10%と拡大していく、それでも
収益が上がらなければカジノを増やして競争原理を働かせるという方向に行くのではないか。しかしカジノが成功したら、それだけ損をする人が増える。カジノの成功は良いことではない」
ギャンブルで負ける以外に、どんなデメリットがあるのか。
「いちばん怖いのは売春。
カジノでは『飲む・打つ・買う』がセットだ。ラスベガスやマカオで遊んでいる客を呼ぶのに、日本だけ『女性がいない』というわけにはいかない。裏でそういうシステムは必ずできる。言い方が悪いが、日本人女性は世界的に人気がある。横浜にカジノができれば、地元の女のコに声がかかるだろう」
女性だけでなく子供にも影響があるという。
「カジノの近くにはレストランやビュッフェ、ブティックなど家族が足を運ぶ場所を作る。カジノの隣に保育所すら作る。子供たちはカジノを目で見て耳で聞いて楽しみ、『いつか自分も遊びに行ける』と思う。こうして次世代の顧客を育てる。カジノはそこに存在するだけで身体の一部になる」
「『日本にカジノを作る必要はない』、ただただそれを伝えたかった。横浜はカジノがなくても人が来る。粋な街だ。このままで良い」。
カジノが国民を不幸にすることは火を見るよりも明らかだ。
<取材・文/月刊日本編集部>