インチキなセミナー講師を見分けるポイントを伝授!
科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実<3>~セミナー講師編~
こんにちは。微表情研究家の清水建二です。2回に渡って科学的・心理学的という言葉を多用するインフルエンサーの不都合な真実をお送りしてきました。
今回から3回に渡って、業種別に論じたいと思います。なお、このシリーズに登場するインフルエンサーたちは、私が直接出会った、あるいは書籍やWeb・TVなどで間接的に知った方々です。
どこまで一般的に言えるかわかりませんが、これ以上誤魔化される方々が増えないように、また、科学知見が適切に扱われるようにという想いを込めて論じています。なお、実在する方々が特定されないように事実が大きく変わらない程度で脚色を加えております。
それでは本題です。今回は、科学的・心理学的という言葉を乱用・誤用するセミナー講師たちを特集します。どんな講師たちでしょうか。
同じ表情分析を学ぶ同志から聞いた話です。その同志が、何百名者もの受講生(信者?)を抱える某カリスマセミナー講師の方と話す機会があり、自己紹介の席で同士が表情分析を専門にしていることを話しました。すると、その講師は開口一番に「あ、エクマンの理論(エクマン理論=表情は万国共通という理論)は、京大の論文で否定されましたよね」と言ったそうです。周りの弟子みたいな方々も「そう、そう」と反応していました。
当然、論文を読んでその発言をしたのかと思えば、「論文そのものは読んでません」との回答。講師の取り巻きの誰からも直に論文を読んだという声はなかったそうです。最終的に、カリスマ講師の発言が京都大学のプレスリリースのみに目を通したものだとわかり、本当にガッカリしました。
その某カリスマ講師は、その程度のレベルでエクマンの理論だけでなく、他の科学的な話も普段されているのではないかと私には疑われてきました。そんな表面的な知識でも、何百名も受講生を集められていることに、逆に感心しました。
ある心理学系の資格講座で総講習時間たった10時間程度で認定講師の資格を与えている団体があります。
当初私はこの団体のカリキュラム作成に関わっていたのですが、途中からこの団体は本物のプロを養成する気がないのだと気づき、この団体が正式に設立される前に抜けたことがあります。心理学のある一分野について、10時間で学ぶことはそこそこ可能だとしても、教えるレベルなど到底不可能です。
表情分析の世界で言えば、表情分析のスキルを習得するまでに50~100時間、分析者として一人前になるのに1000時間はかかると言われています。分析者として一人前になり、様々な表情分析の経験を積み、そして教える側に立つ、こうした手順を踏むため、講師になるまでに数年はかかると考えられます。
他にも数十時間で心理カウンセラーを養成出来ると豪語するコースもあります。
人の心は一度壊れてしまうと、ヒビの入ったグラスの如く、いつ何時粉々になってしまうかわかりません。そんな相談者の心を即席心理カウンセラーがかき回し、相談者の心の傷を広げてしまい、悲劇的な事態になっている例を耳にします。
人の心を扱う側は、即席ではなく、深い知識と洞察を長い時間かけ、心理学を実装するために試行錯誤し、学んできた知見を血肉化してはじめて、責任ある態度と発言を兼ね備えた心理学実践者となれるのだと私は思います。