12月18日に萩市全員協議会でイージス・アショア配備について市議に説明、質疑応答をした防衛官僚。もう一つの配備候補地である秋田県との対応の違いに萩市議から疑問が噴出
「トランプ大統領に言いなりの安倍首相は、米国の要請で爆買いした兵器を地元に配備。
報復攻撃のリスクのある米国の防衛前線基地として、自らの地元を献上することに喜びを感じる“自虐癖”の持ち主なのか」
こんな疑問がわき起こったのは、昨年の12月18日、イージス・アショア配備候補地の山口県萩市での全員協議会(市議への説明と質疑応答)を終えた防衛官僚に、囲み取材で「山口への差別ではないですか。安倍総理は納得しているのでしょうか」と問いただした時のことだ。
防衛官僚は一言も答えず、司会者が会見終了を宣言。控え室まで行って同じ質問をぶつけたが、防衛官僚は無言のままだった。
総理大臣が一人も出ていない秋田県では、隣県(青森と山形)を含めてイージス・アショア配備候補地の再調査中だ。ところが、安倍首相を含めて8名の総理大臣を輩出した山口県では、
早々と「陸上自衛隊むつみ演習場」(萩市・阿武町)が“唯一の候補地”だと結論づけられた。
昨年の12月11日付『東京新聞』は「地上イージス 秋田見直し 反発に配慮、政府検討」と題して「菅義偉官房長官は住宅地との距離を考慮するよう既に防衛省へ指示」と見直しの動きを報じていた。
安倍首相と関係良好の地元自治体トップさえ、今回の防衛省の対応には異論を唱えている。
全員協議会の前日の17日、山本朋宏・防衛副大臣が山口県庁で同じような説明をしたのに対して、村岡嗣政・山口県知事は「秋田県と山口県への配備で日本全体を最も効果的に守れる」という防衛省の説明を紹介。
「もし(秋田の新屋演習場以外の)別の場所になれば、山口に置くことの意義について改めて確認する必要はあると思う」と述べた。
さらに、配備候補地の藤道健二・萩市長も
「秋田県が再検討されている状況では、萩市長として配備に関する態度の表明はできない」と釘を刺すと、花田憲彦・阿武町長も
「候補地の演習場は、住民の生活圏や生産活動圏にあまりにも近接しすぎていて住民の理解はとうてい得られない」と強調したのだ。
12月17日に山口県庁で村岡知事や花田・阿武町町らに再調査結果を報告する山本防衛副大臣(右)
翌18日の萩市全員協議会(市議への説明と質疑応答)でも、安倍首相の地元・山口県の住民を愚弄するような防衛官僚の発言が相次いだ。
「住民の意向も配備適地選定の判断材料の一つ」と防衛省は説明してきたのに、住民の意向は報告書に記載されていない。このことを問題視した市議に対して、防衛官僚は
「むつみ演習場は現段階でも『候補地』であって、最終的な『適地』ではない」と返答。前日、山本副大臣は
「むつみ演習場が唯一の適地」と説明していたにもかかわらず、である。
ある市議が、秋田県は青森県と山形県を含めて再調査中なのに、山口県の代替候補地として福岡県などの隣接県が調査されていないということを疑問視した。しかしこれにも、防衛官僚は具体的理由を挙げて答えることはなかった。