「日韓関係悪化」だけでは説明つかない訪日外国人動向の異変。岐路に立つ日本のインバウンド政策

浅草雷門と観光客

t.sakai / PIXTA(ピクスタ)

「インバウンド」が定着してきた中、浮上してきた問題

 東京オリンピックの開催を控え、日本を訪れる外国人観光客は、いまや年間3000万人を超え、街の景観のみならず、我々の社会のありようを変えつつある。  国土交通省の外局である観光庁の統計によると、訪日外国人の旅行消費額は年々増え、2018年は4兆5000億円を超え、19年もさらに増加する勢いだ。1990年代前半のバブル崩壊以降、長く停滞していた国内の宿泊旅行者数も、外国客が補いつつある。彼らのニーズにつながる商品やサービスを提供した小売や製造業、宿泊、不動産、運輸などに関わる業界は恩恵を受けている。  だが、外国客の数的拡大はいいことづくめとは限らないことも明らかになってきた。  たとえば、京都のように外国客の増加で地元の人たちの生活に支障が出ているケースもある。観光公害やオーバーツーリズムは海の向こうの話ではない。  その一方で、日韓関係悪化による韓国客の激減で経済的「打撃」を受ける九州方面や対馬のケースもある。これも特定の地方に外国客が集中することで起きた反動といえるが、中国や韓国はこれまで何度か政治的な理由で観光客を減らした経緯がある。  外国客が増えても、いったい誰にお金が落ちているのかという疑問もある。  恩恵を受けているのは一部の地域や企業、個人のみ。クルーズ客船が多数寄港しても、特定の免税店でしか買い物をしなければ、地元の人たちは無関心にならざるを得ない。ヤミ民泊に対する厳しい見方も、生活空間に見知らぬ外国人が侵入することで、住民の不安をかき立てたからだ。これらも誰のための観光客誘致なのか、という問いとは無関係ではないだろう。

右肩上がりで増えてきた訪日外国人数に「異変」

 そして、いま訪日外国人の動向に異変が起きている。これまで右肩上がりで増えてきた訪日外国人数が伸び悩み始めているのだ。毎月公表される日本政府観光局による訪日外客数統計によると、日韓関係悪化により2019年11月の韓国客は前年同月比65.1%減と、東日本大震災時に匹敵する激減ぶりとなった。  中国や台湾、香港などから多くの観光客が訪れたものの、トータルでみると前年同月比0.4%減。年次ごとにみていくと、伸び率はこれまでの勢いを失い、2018年以降は1桁台に縮小している。2019年1~11月の訪日外客数は前年比でわずか2.8%増である。伸び率自体は母数が拡大すれば小さくなりがちだが、東日本大震災以降、2010年代に国際的にみて著しく増加した訪日外客数は、この1、2年で伸び悩んでいる。このままでは、2020年に4000万人という政府目標の達成は難しいというほかない。 <訪日外客数の前年比の推移> 2012年 約214万人増/前年比34.4%増 2013年 約200万人増/同24.0%増 2014年 約305万人増/同29.4%増 2015年 約632万人増/同47.1%増 2016年 約430万人増/同21.8%増 2017年 約465万人増/同19.3%増 2018年 約244万人増/同8.7%増 2019年1~11月 約79万人増/同2.8%増
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