ローゼンタール医師は、2008年の医学雑誌「精神医学」に次のように述べます。季節性感情障害の主な治療法は、光療法、心理療法、および薬物療法です。また、ストレス管理と運動プログラムも役立ちます。光療法は世界中で主力になりました。季節性感情障害の患者の60~80%が光療法の恩恵を受けています。
ただし、光療法の必要な治療の量、タイミングと効果は人によって異なります。ほとんどの人は、紫外線を除去した白色蛍光灯を使用し、朝(メラトニンの分泌が衰え始めたころ)、1日あたり30~90分(10,000ルクス=日中の木陰の量)の光療法が最適です。多くの人は、治療を開始してから2~4日以内に光療法に反応します。
※ビタミンDのレベルが低い原因は、通常、不十分な食事摂取または日光への暴露の不足によるものです。季節性感情障害は血中のビタミンDのレベルが低いことが見つかり、ビタミンDの補給が治療に期待されましたが、有効性のエビデンスはまちまちです。
一部の研究では、ビタミンDの補給が光療法と同じくらい効果的であると示唆する一方で、他の研究ではビタミンDには効果がないことが示されています。現在、ビタミンDの補給自体は、効果的な治療とは見なされていません。
ところで、最近「腸内細菌」の研究がホットです。そんな中、ベルギーのルーヴァン・カトリック大学のジェロエン・レイズ博士らは、2019年2月の「Nature Microbiology」に腸内細菌とうつ病の関係を
報告しました。
この報告は、人を対象とした腸内細菌とメンタルヘルスの関係を調査したこれまで最大の研究です。結果、特定の腸内細菌が不足している人はうつ病を経験する可能性が高いことが示されました。レイズ博士らはまず、1054人のベルギー人のボランティアを調査しました。
すると、うつ病の人では、2種類の腸内細菌、コプロコッカスとディアリスターが不足していることが見つかりました。同じ結果は、オランダからの1064人のボランティアでも見られました。
ただし、必ずしもこれらの細菌の不足がうつ病を引き起こすという意味ではありません。たとえば、うつ病の人は食事が異なり、腸内細菌叢が変化する可能性があります。少なくとも、多くの腸内細菌が神経細胞の機能、そしておそらく気分に影響を与える物質を作ることができることが示されました。この結果は腸と脳のつながりのより深い理解、精神疾患の新しい治療法への道を開く可能性があります。すでに腸内細菌に基づく糞便移植の試験などが現在計画されています。
さらに、これらの健康な腸内細菌が、季節性感情障害の予防や管理に役立つ可能性も期待できますよね。
米クリーブランドクリニックは、冬の間の憂鬱を克服するために、以下の食べ物を推奨しています。ぜひ参考にしてください。
1)繊維質の多い炭水化物
全粒粉パン、シリアル、パスタ
皮付きジャガイモ
全粒穀物(玄米、キノア、オート麦など)
新鮮な果物
野菜(冷凍または低ナトリウム缶詰)
マメ科植物
2)タンパク質
脂肪の少ないタンパク質食品は、心臓が健康であるだけでなく、高脂肪の肉(サラミ、スペアリブ、ソーセージなど)よりも消化しやすいため、満腹感を得ます。
赤身の牛肉と豚肉
皮のない白身の鶏肉と七面鳥
豆腐
マメ科植物
卵
低脂肪乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)
シーフード(イワシ、淡水魚、海水魚、サバ、ニシン、サーモン、マグロ)
季節性感情障害の症状に気づかれた方は、早めに専門の医師に相談することをお勧めします。また、周囲の人は、季節性感情障害の患者の理解とサポートをしてください。
<文/大西睦子>
内科医師、米国ボストン在住、医学博士。東京女子医科大学卒業後、同血液内科入局。国立がんセンター、東京大学医学部付属病院血液・腫瘍内科にて造血幹細胞移植の臨床研究に従事。2007年4月より、ボストンのダナ・ファーバー癌研究所に留学し、ライフスタイルや食生活と病気の発生を疫学的に研究。08年4月から13年12月末まで、ハーバード大学で、肥満や老化などに関する研究に従事。ハーバード大学学部長賞を2度授与。現在、星槎グループ医療・教育未来創生研究所ボストン支部の研究員として、日米共同研究を進めている。著書に『カロリーゼロにだまされるな――本当は怖い人工甘味料の裏側』(ダイヤモンド社)、『「カロリーゼロ」はかえって太る!』(講談社+α新書)、『健康でいたければ「それ」は食べるな』(朝日新聞出版)がある。