若い世代にもモラハラ夫、およびその予備軍は大量に存在する<モラ夫バスターな日々42>

共働き夫婦の8割が「家事は妻がほとんど負担」

 株式会社マクロミルの調査によると、フルタイムでの共働きは、若い世代の方が多い。共働き夫婦の約半数は、家事分担の理想を「夫50%、妻50%」と回答している。  ところが、実際の分担比率で最も多いのは、「夫10%、妻90%」である。妻の家事分担率の方が高い夫婦は約8割、妻が80%以上の夫婦が約半数に及ぶ。 (参照:共働き夫婦の家事分担調査。夫婦平等という理想は進む中、現実は後退|HONOTE by マクロミル)  つまり男女平等は、口先だけで、家事の分担は、妻の約10分の1と申し訳程度に過ぎないのである。  さて、総務省の統計によると、高齢の男性と若年の男性の家事を担当する時間は、むしろ高齢者のほうが多い。高齢者は仕事を離れているとはいえ、女性については、若年者の方が高齢者よりも家事担当時間が長いことを考えると、男性の若年者が家事をしない言い訳はできない。つまり若年者は、高齢者と比較しても、ダメダメなのである。  そして、統計によると、共働き世帯での女性の家事分担率は平成18年で90%とされ、妻はフルタイムでもほぼワンオペで家事、育児を担当し、男性は殆んど担当していない。 (参照:共働き世帯における妻の家事の負担割合の推移|総務省統計局)  個別案件を多数扱ってきた離婚弁護士としての経験からも、統計からも、若い世代について、モラ文化が改善しているとは到底言えない。  

若い世代は、モラ文化を脱却できるか

 冒頭の若い夫に戻ろう。彼は、妻が子を連れて出て行った理由がわからないと言う。実家や友人から孤立させ、自宅マンションに幽閉し、ワンオペ家事、育児をさせ、経済的モラを行ってきたことについて、全く反省がないのだ。妻が出て行った上記のモラを具体的に説明したが、彼は、自己弁護の屁理屈を繰り返し、モラは言いがかりと反論した。  その後、子どもに会っていないことを同情した妻が、面会交流を実施した。しかし夫は子どもを抱き上げず、一言声をかけただけで、子どもとの「交流」は30秒もなかった。面会交流の残りの時間はもっぱら、出て行った妻に「帰宅」を促す説教にあてられた。説教は、自らを優越した存在と認識しているからこそ行われるものである。つまり彼は、モラ夫である。  日本のモラ文化、それによって引き起こされている日本の衰退を心から憂慮している1人として、若い世代には是非、モラ文化からの脱却を期待したい。期待したいが、楽観できる材料が見当たらない。 <文/大貫憲介 漫画/榎本まみ>
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。コロナによる意識の変化を活動に取り込み、リモート相談、リモート交渉等を積極的に展開している。著書に『入管実務マニュアル』(現代人文社)、『国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会