── 安倍政権には、日本の食の安全を守る気がありません。我々は、どのようにして食の安全を守っていけばいいのですか。
鈴木:2019年10月には、
ゲノム編集食品の販売が解禁されました。しかも、
表示義務もありません。2023年には遺伝子組み換えでないという食品表示も実質的にできなくなります。
安倍政権は、世界に逆行するように、発がん性が指摘される除草剤成分「グリホサート」の残留基準値も大幅に緩和しました。
そして、貿易自由化が加速することによって、危険な輸入食品がさらに氾濫し、国産品を駆逐しようとしています。しかも、
表示がなくなれば、安全な食品を選択することも不可能です。まさに今、
日本の食の安全は瀬戸際に来ているのです。
我々がすべきことは、
少々高くても、安全で安心なものを作ってくれる生産者と、それを支える消費者のネットワークを拡大することです。その手本となるのが
スイスです。スイスでは国産卵は1個80円で、フランスから輸入しているものの6倍もしますが、国産の方が売れているのです。私の知り合いが、スイスの小学生の女の子に聞くと「
これを買うことで生産者の皆さんも支えられるが、そのおかげで私たちの生活が成り立つのだから当たり前でしょ」と答えたそうです。
生協が食品流通の5割以上を占めるスイスでは、消費者が農協などと協力して生産者サイドに働きかけ、
健康、環境、生物多様性などに配慮した生産を促しています。その代わりに、消費者は農産物に込められた多様な価値が価格に反映されていることを認識し、そのコストを分担しようという意識を持っています。
食の安全を守りたいならば、日本もスイスを見習うべきです。
(聞き手・構成 坪内隆彦)
すずきのぶひろ●東京大学大学院農学生命科学研究科教授。専門は農業経済学。