下関市長選の安倍派勝利から見る支出額・参加者増の謎。「桜を見る会」追及チームの下関視察で疑惑が浮上

野党追及チームが下関を視察

安倍首相(山口4区)の地元・下関を視察、ヒアリングをした追及本部の野党議員

安倍首相(山口4区)の地元・下関を視察、ヒアリングをした追及本部の野党議員

「総理大臣ならば、公金を使って地元有権者に供応接待(買収)をしても許されるのか」 「犯罪者にしか見えない安倍首相の居座りは、日本が法治国家ではない証ではないか」  こんな疑問を国民に抱かせる「桜を見る会」問題が核心に迫りつつある。追及本部の野党議員10名は12月1日と2日、安倍首相(山口4区)の地元下関を視察。市民や地方議員(山口県議や下関市議)からヒアリングを行い、選挙で汗をかいてきた安倍首相の選挙における“功労者”が優先的に招待されている実態をつかんだのだ。 「自治会やPTAの皆さんを呼んでいる」という総理答弁を一刀両断にしたのは、資料請求直後に招待者名簿を破棄された宮本徹衆院議員(共産党)。最後の囲み取材で「税金で後援会活動をしていたことが明らかになった」と強調、こう説明した。 「一般的に功労功績があった自治会やPTA役員を呼んでいるのではなく、『安倍さんを応援している自治会の役員さんには声がかかるが、応援をしていない人には声がかかっていない』という証言がいくつも得られた。総理答弁は虚偽答弁ではないか。このことが今回の視察で明らかになったことの一つだ」

安倍派、林派の市長が交互に誕生

「追及チーム 下関・山口ルート班」キャップの柚木道義衆院議員(立民会派)も、「安倍後援会の方ですら『選挙利用だと思われても仕方がない』と言っている」という証言を紹介しながら、「安倍総理の安倍総理による安倍総理のための桜を見る会だった」と断言した。  視察議員はヒアリングを通して、首相の元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎市長が初当選した「下関市長選(2017年3月12日投開票)」に注目していった。  以前の記事「『桜を見る会』の招待状は安倍首相の『選挙協力へのお礼』に使われていた!?」で筆者が紹介した通り、安倍首相と林芳正・元農水大臣(参院議員)が父親の代からライバル関係にあり、長年にわたって下関市長選は両者の代理戦争のような様相も呈していた。両派の市長が交互に当選するというシーソーゲームが繰り返されてきたのだ。 ●江島 潔 市長(1995年~2009年) 安倍派 ●中尾 昭友市長(2009年~2017年) 林派 ●前田晋太郎市長(2017年~現在)  安倍派

2017年の選挙では安倍派が最後に逆転

 安倍首相の選挙区(山口4区)は下関市(人口約26万人)と長門市(約3万人)から成り、9割弱の有権者を抱える下関市トップが安倍派となることは自らの選挙にプラスとなることは言うまでもない。  また市政への影響力が増す効果も期待できる。現・参院議員の江島市長時代には、神戸製鋼所などの安倍首相関連企業が地元大型案件を相次いで受注して談合疑惑も浮上、「桜を見る会」に招待されない田辺よし子・下関市議(無所属)らが追及した。  その結果、安倍派市長による“お友だち優遇政治”への反発が強まり、江島氏は不出馬に追い込まれた。そして2009年の下関市長選では、安倍派県議だった新人候補を林派の中尾市長が破り、安倍派市長による市政にピリオドを打ったのだ。
首相元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎・下関市長

首相元秘書で安倍派市議でもあった前田晋太郎・下関市長

 そして2013年に再び安倍派候補を破った中尾氏だったが、三選を目指す2017年の下関市長選では、安倍首相が全面的に支援した前田氏に僅差で敗北した。林派の中尾氏を支援した田辺市議は「最後で逆転されましたが、昭恵夫人も現地入りをしてテコ入れ、安倍派と林派に割れた公明党市議を説得に回ったと聞きました」と振り返る。安倍夫妻で“全力投球”をしたようにみえる2017年の下関市長選で安倍派市長が誕生、市長ポストを林派から8年ぶりに奪還したのだ。

2018年・2019年の支出額と参加者数が増加のわけは!?

安倍首相と地元・下関でライバル関係にある林芳正・元農水大臣(参院議員)

安倍首相と地元・下関でライバル関係にある林芳正・元農水大臣(参院議員)。写真は、2012年7月の山口県知事選

 地元での天下分け目の決戦時期と、「桜を見る会」の参加者と支出増加の推移を重ね合わせると、下関市長選で汗をかいた支援者へのご褒美ではないかという関連性が浮き彫りになるのだ。  支出額(万円)   参加者数 ○2014年 3005.3   約13700 ○2015年 3841.7   約14700 ○2016年 4639.1   約16000 ◎2017年 4725.0   約16500 ●2018年 5229.0   約17500 ●2019年 5518.7   約18200  2014年から2016年の3年間の参加者増加は、2017年3月の下関市長選で汗をかいてもらうための準備段階での供応(事前買収)が疑われる。2017年(下関市長選の翌4月)から今年2019年までは前田市長誕生への論考褒賞的な供応(事後買収)という主旨ではないかとの疑惑がわいてくる。  もちろん後者は、2021年の下関市長選再選に向けた供応という効果も考えられる。多くの国民の目には「選挙で実働部隊になる支援者への供応」と映るだろうし、「選挙民への買収を禁じる公職選挙法違反の疑いは濃厚」と捉えるに違いない。こうした疑問が現実と合致するのか否かを判断するには、名簿を公開するのが一番だが、安倍政権(首相)は「破棄した」と言い続けている。  誰もがこう勘繰りたくなる。 「名簿を公開すれば、参加者増のかなりの部分が、安倍首相が関係する選挙で汗をかく支援者であることが明らかになり、公選法違反を裏付ける動かぬ証拠になるからではないか」と。

林派市議の参加者はゼロではなかったが、安倍派との違いは歴然

 下関市長選では市議も安倍派と林派に分かれて戦ったが、安倍派市議への論考褒賞という見立てと合致する記事も出ていた。11月19日付の『毎日新聞』は「桜を見る会 下関市議枠 安倍事務所から申込書」と銘打った記事を1面トップで、両派の差別的対応をこう報じていた。 「首相の地元・山口県下関市の複数の自民系市議が、安倍事務所名の参加申込書で自身の支援者を招待していたことが18日に判明した。複数の自民系市議が証言した。市議らによると、申込書は何枚でもコピーでき安倍事務所から上限は示されていなかった」「一方、共産や公明など非自民の複数の市議は『用紙をもらったことがない』と話す。野党の市議は『自民が公的行事を支持固めに使っている』と批判した」(同記事より)  ただし申込書が回って来なかった林派市議の中にも、安倍派市議に頼んで申込書を回してもらい、参加した人はいたという。林派市議の参加者はゼロではなかったが、安倍派との違いは歴然としていたのだ。  下関視察に参加した杉尾秀哉参院議員(立憲民主党)は、下関市長選について次のような説明をした。 「自民党の中でも分断みたいなものがあって、そのきっかけになったのが(2017年の)市長選挙。『林派と安倍派が戦って安倍派が勝ってエスカレートしたのではないか。それが桜を見る会への人数拡大にもつながった』と(聞いた)」

内閣総辞職に追い込まれるのか、疑惑一掃を狙った“みそぎ桜解散”か

「桜を見る会」の“招かれざる客”である田辺氏は、視察議員と意見交換で同じような見方をしていた。 「『桜を見る会』への招待は、2017年の下関市長選への論考褒賞であると同時に、次期下関市長選(2021年3月)での前田市長再選に向けた支持固めや新たな支援者拡大の狙いもあると見ています」  下関視察の野党議員たちは「安倍首相の逃げ切りは許さない」と強調、年明け通常国会での追及に照準を合わせていた。先の宮本氏は「安倍首相は予算委員会の審議にも応じない。やっぱり隠したくて仕方がないのだと感じているが、国会閉会で逃げ切りを許さずに徹底的に調査、追及をしていきたい」と意気込んだ。  臨時国会では一問一答形式の予算委員会は安倍首相が逃げ続けて開かれなかったが、通常国会は予算委員会から始まる。ここでの野党側の追及(連続質問)に安倍首相が耐えられるのかが焦点なのだ。内閣総辞職に追い込まれるのか、それとも疑惑一掃を狙った“みそぎ桜解散”に打って出るのか。与野党激突の気運は、年明け早々に最高潮に達するのは確実なのだ。永田町から当分目が離せない。 <文・写真/横田一>
ジャーナリスト。8月7日に新刊『仮面 虚飾の女帝・小池百合子』(扶桑社)を刊行。他に、小泉純一郎元首相の「原発ゼロ」に関する発言をまとめた『黙って寝てはいられない』(小泉純一郎/談、吉原毅/編)の編集協力、『検証・小池都政』(緑風出版)など著書多数
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