入管により3年以上引き離され続ける母と娘。果たして、ここまでやる必要があるのか

入院しても入院先も病名も教えない東京入管

東京入管

人権を無視した収容を続ける東京入管

 12月2日、夫が面会に来ると、1階の受付職員にエメリータさんは11月29日に入院したと告げられた。しかし、どんなに問い詰めても、病名と入院先を教えてくれることはなかった。  同日、担当弁護士が4階の総務課に電話し、入院先を教えるよう求めた。しかし何故なのか、どうしても教えようとはしなかった。 「入院先を教えないなんて、法的根拠はないはず。」 と問い詰める弁護士に対し、総務課職員は、 「法的根拠はありません、保安上の問題です。」 の繰り返しであった。  エメリータさん12月5日に退院したが結局、家族はお見舞いに行くことは叶わなかった。もし家族がお見舞いに行けたら、約4年8ヵ月ぶりに家族が触れ合うことができて、少しでもエメリータさんは元気になることができたかもしれない。その可能性すらも入管は無情にも奪ってしまう。 「本当に入管は好き勝手言う!!」  弁護士は怒りをにじませていた。

仮放免の裁判も長期に渡りエメリータさんの衰弱は止まらない

 現在、エメリータさんは仮放免を求める裁判を始めているが、本人は収容中のため参加ができずにいる。  12月10日の第二回目の裁判では、弁護士は食事もとれず、入院するほどに衰弱しているエメリータさんを早期の解放するように訴えた。  それに対し、次回の裁判は2月20日と決まる。裁判が長引くことを危惧した弁護士は「もっと早くできませんか?」と提案したが、入管側は「ちゃんとした資料を作成するにあたり、時間はかかる」とはねのけ、裁判長も同意した。  傍聴に来ていた長女は、かなり落胆した様子だった。 「私が中学を卒業したあたりで、お母さんが連れて行かれてしまいました。でも、すぐ帰ってくるものだと思ったけど、そうじゃなかった……。 面会は週に1,2回、多いときは週3回行きます。早く出たい、辛いって言っていた。ある日、面会に行くとお母さんは下を向いて黙ってしまい、ただ頭を抱えている時もあった。まだ面会時間はあったけど、わたしはじゃあ行くね、と部屋を出ることもありました。これから面会に行きますが、次の裁判があまりにも先過ぎて、お母さんに伝えたらもっと病気になってしまいます」  12月13日、筆者との面会でエメリータさんは、痩せこけてはいたが明るい様子を見せていた。裁判の件は辛いが、応援してくれる人たちがいることが支えとなっているようだった、今は、収容所内で買えるチョコと林檎を少しずつかじり、毎日をしのいでいると言う。 「私はもう名前も顔を出してもかまわないよ。ここまで来たんだから、もうなんでもやる。」 と、強い決意を見せてくれた。  果たして、ここまで収容して家族を引き離されなければならないほどの罪をエメリータさんは犯したのだろうか?  何年も触れ合う事を許されない母と娘の姿を見ると、本当に罪深いのは果たしてどちらであろうかと考えずにはいられない。 <取材・文・撮影/織田朝日 写真提供/エメリータさん>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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