ライバルであるVW傘下のルカ・デ・メオを高く評価するルノー
ルカ・デ・メオの経営者としての手腕に注目したのが
フォルクスワーゲンのライバル、ルノーである。特に、現CEOのジャン・ドミニク・スナールが彼にルノーの将来を託したいと強く望んでいるという。ルノーグループではカルロス・ゴーンに代わる人物の登場が必要なのである。それにはルカ・デ・メオが最適任者だとスナールは判断しているのである。
経営と販売に長けており、しかも従業員にやる気を起こさせるといった面でルカ・デ・メオは優れているとルノーでは評価しているという。それはセアットでのCEOとしてこの4年間で証明済みだ。
ブルームバーグの分析家の間ではルカ・デ・メオのことを「自動車業界においてリーダーシップとしての経験に富み、外交面での器用さ、そして5か国語(イタリア語、スペイン語、英語、フランス語、ドイツ語)に堪能であること。更に、パートナーとして日本企業そして株主にフランス政府が控えているということを考慮するとルカ・デ・メオの存在は非常に魅力あるものだ」と評価している。
自動車業界でどこにも影響を受けていないコンサルタントのバーナード・ジュリエンは「ルカ・デ・メオは多くの必要条件を満たしている・製品のプラニングについて秀でている。それが今のルノーには正に必要なことだ」と指摘した。更に、「ルカ・デ・メオは現在グループPSAのCEOカルロス・タバレスにプロフィールが似ている」とした。ポルトガル出身のタバレスはルノーの革新に多大の貢献をした人物だ。(参照:「
Merca2」)
フランス政府はまだ19%の株を所有しているということもあって政府の考えもルノーの方針に影響を与えている。ということから、ブルーノ・ル・マリー財務相はBFMテレビのインタビューで「(ルノー)グループはこの業界のプロが次期経営者には必要だ」と指摘した。これから電気自動車や自動運転車そして排気ガス規制などとも取り組んで行かねばらない。その為にもこの業界を十分に熟知しているプロが経営を担うことが必要だと指摘しているのである。(参照:「
Merca2」)
一方のセアットはこの4年間救世主的な存在だったルカ・デ・メオが去った場合の後任が誰にになるかという不安を抱えている。ルノーは年内に彼の雇用を発表したいようであるが、3月までそれが引き延ばされる可能性が強いと見られている。
ルノーグループは2年後に彼がCEOに就任してルノー・日産・三菱アライアンスの主導権を握ることを狙いとしているのである。カルロス・ゴーンと比較してルカ・デ・メオは自動車のことはゴーンよりも遥かに熟知している人物である。ただ、ゴーンのような強引さはない。寧ろ、チームワークを優先させるタイプだ。その意味では日産・三菱とのハーモニーを維持しての統括は彼だとより摩擦も少なくスムースに行くように思える。
<文/白石和幸>