「シーンは大きくなったけど、ジャンルの溝は深まった」AYA a.k.a. PANDAと語るMCバトルの未来<ダメリーマン成り上がり道#25>

 音楽でも映画でも、あらゆるカルチャーに見られるのが、タコツボ化の現象だ。人気が拡大したカルチャーには、多様なジャンルが生まれる。そして各々のジャンルは、独自の表現を先鋭化させていく。その過程で、表現者もファンも次第に没交流になっていく……。このような流れは日本語ラップの世界でも起こっているそうだ。

MCバトルはヒップホップの入口に

AYA a.k.a. PANDAとMC正社員

AYA a.k.a. PANDA(右)とMC正社員(左)<撮影/荒熊流星>

 戦極MCBATTLEを主催するMC正社員の連載『ダメリーマン成り上がり道』の第25回は、引き続きラッパー・AYA a.k.a. PANDAとの対談。今回はMCバトルの未来について。 ――バトルのシーンが盛り上がったことで、ご自身の曲を聴いてくれる人が増えた実感はありますか? AYA a.k.a. PANDA (以下、AYA):「最近は少しありますね。『なんかヒップホップ盛り上がっているよね』と言われることも増えましたし」 正社員:「アヤパンくらい人気と実力があるアーティストなら、バトルの盛り上がりで入ってきた層も取り込めると思うんですよね。バトルから入ってきたお客さんも、結局ラップが好きになるから」 AYA:「バトルヘッズが私の曲を聞くまでの道のりって、メチャクチャ遠い印象がありますけど(笑)」 正社員:「でも音楽的にすぐ近くにいるアーティストもいるからね。あと今、『バトルってダセえよな』みたいに言っている音源が人気のアーティストで、もともとバトルヘッズだった人とか実際いますから。  あと、ちゃんみなだったりとか、10代半ばでデビューしたさなりとかも、もともとはバトル出身ですからね。そういう意味で、MCバトルの盛り上がりは、日本語ラップ全体の盛り上がりにもいろんな影響を与えてると思うし、その入口として大きな役割を果たしていると思います」

同じシーンでも異なる客層や遊び場

――この連載では「MCバトルの世界に女性を増やしていくにはどうしたらいいか」という話をよくしているんですが、アヤパンさん、何かアイディアはありますか? AYA:「何ですかね……。MCバトルのイベントをやる場所と、私がいつもライブしている空間って、何もかもが違うんですよ。客層もノリも違うし、時間帯も違うし」 正社員:「そもそもハコの違いが大きいよね」 AYA:「そう、まずハコが違う。私が最近ライブするのはスーパーきらびやかな場所だったりしますから(笑)」 正社員:「渋谷でもCAMELOTとかでしょ? こっちはFAMILYとかだから」 AYA:「あとT2とかJumanjiですね。そうやって比べると、MCバトルをやってるハコは若い女子には入りづらいんです。私がライブをやっているハコがカフェとかファミレスだとすると、バトルの場所はラーメン屋とか牛丼屋みたいな感覚ですね。バトルも大きい会場になれば全然雰囲気は違うんでしょうけど」 正社員:「アヤパンのファンは他にどんなアーティストを聴いてるの? 」 AYA:t-Ace君とかCREAMとかですね」 正社員:「やっぱそのへんなんだ」 AYA:「あとKOWICHIBAD HOPあたりもギリギリ聴いてると思います」 正社員:「KOWICHI、BAD HOPあたりは、俺らとアヤパンの中間にいる感じかもな」 AYA:「そうかも。私のお客さんはレぺゼン地球とかファッキングラビッツとかも聴いちゃってるから」 正社員:「ヤバいな!」 AYA:「アヤパンもいい波のってんですよ! 『甘えちゃってSorry』は『いい波のってんね~』と流行った時期が近かったので、それも大きかったかもしれないですね」
次のページ
パリピの“光る棒”は盛り上がりの証!
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会