五つ星運動が分裂危機。イタリアで極右のサルビニが首相になる可能性が高まる

 Matteo Salvini

失言に批判が集まると、ヌテラのボトルとセルフィーを撮ってTwitterにアップしたサルビニ。
サルビニのTwitterより

 イタリアの次期総選挙で極右のマテオ・サルビニの同盟が政権に就く可能性が非常に高くなっている。五つ星運動(M5S)が3つに分裂する方向に向かっているからだ。  イタリアの世論調査センシスによると、48%のイタリア人は「強い指導者」が政権に就くことを希望しているという。その対象にされているのがサルビニであろう。

大衆ウケを狙った動きしかしないサルビニ

 ところがサルビニを皮肉った評価をしている人物がいる。それが的を得ているように筆者には思える。その人物とはM5Sからローマ市長になったヴィルジニア・ラッジである。彼女がスペイン紙『El País』のインタビューの中でサルビニのことを次のように語っている。 「サルビニは日和見主義者だ。彼は何事をするにも常に自分が大衆にどのようなイメージを与えるかということを意識して行動している。その証拠は彼が内務相になって権力を握ってから見ることができる。(内相に就任してから)内相としての執務に就いたのは36日間を満たさなかった。それ以外の14か月はイタリア国内を回ってTシャツを着て(支持者と)写真を撮ったり、(訪問する場所の)ティピカルな料理を食べたりしながらあらゆることに私見を披露していた。しかし、治安や社会秩序といった面について彼は何もしていない」 「全国の市長が彼に陳情しても、彼はそれに常に背を向けていた」 「ローマ市に警官の増強をすると約束しておきながらそれを果たしたこともなかった。サルビニは単に良く喋る人だということだ」 (参照:「El Pais」)  どこかで聞いたことがあるような話ばかりではあるが、これはあくまでもイタリアのサルビニについての批判である。

浅い理解の扇動的発言が逆にイタリアでも批判の的に

 サルビニは私見を色々と披露するのだが、そのどれもが物事への理解が浅く、単に人を煽るためだけに発せられるものだ。  つい最近も彼はそんな浅い発言をしている。来年1月に予定されているエミリア・ロマーニャ地方選挙のための遊説を行ったサルビニは、彼が食べる食事の中にヌテラ・チョコスプレッドはないと語ったのである。どういうことかというと、ヌテラのチョコスプレッドの原材料として使用されるヘーゼルナッツがトルコ産だからということなのである。つまり、彼は「イアリアの農業を支援するためにイタリア産のものを食べよう」と勧めた、というわけだ。  しかし、ヌテラはのチョコスプレッドは、イタリアのチョコレートの大手企業フェレロだし、同社がトルコ産のヘーゼルナッツを使用している理由はイタリアではその生産量は非常にわずかで原材料として使用しようにも同社の需要を満たすだけの生産量がないため、地理的にも近いトルコ産を使用しているというわけである。そのような事情を調べもせずに、単にイタリアの農家に気に入られようとした彼の発言は、逆に関係者や一般消費者に心証を悪くさせたのである。その後、それに気づいたサルビニは謝罪したらしい。このような軽率さはポピュリズム政党が良く侵す傾向にある。(参照:「ABC」)  ちなみに、この失言を批判されたサルビニは、すぐさまTwitterでヌテラのチョコスプレッドとセルフィーを撮影した。
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