麻薬潜水艦はなんと「使い捨て」。カナリア諸島には麻薬潜水艦の墓場が!?
先日、スペイン・ガリシア地方でコカイン3000キロ分を積載した「手作りレベル」の潜水艦が治安警察によって摘発されたことを寄稿した。
152個の包みに分けられた3トン分のコカインを積んだ「潜水艦」は、南米コロンビアを出向してアフリカのカーボベルデから北上してポルトガルからガリシア地方に向かった。実に20日間の航海だったという。警察の監視の届かない海上で積荷のコカインをガリシアのカルテルに渡す予定であった。ところが、時化でそれが不可能となり、しかもエンジンも不調で燃料も残り少なくなっていた。ということで、仕方なくアルダン港に向かいその河口に入ったところで待機していた治安警察に発見されたのであった。摘発を恐れて、1億ユーロ(118億円)の価値あるコカインを積んでいた潜水艦を沈没させたが、結局それも引き揚げられお縄になったわけだ。(参照:「EL Mundo」、「La Razon」)
アメリカの海上では今世紀に入ってからレーダーシステムの性能が向上して麻薬密輸艇の発見がより容易となっている。それに対抗して、発見され難い麻薬を積んだ潜水艦の航行が南米や中米から米国に向けて頻繁となって行った。
当初、Big Footと呼ばれていた麻薬潜水艦は一般には噂の域を出ることはなかった。それが初めて一般に姿を現したのは2006年のことであった。コスタリカの沖合160キロの所でそれが摘発されたのであった。
ちなみに、米国への密輸の場合、陸上から密輸送するよりも海上からの密輸の方が摘発される回数は陸送の3分の1だという。(参照:「Infobae」)
最初に潜水艦に麻薬を積んでの密輸をプラニングしたのはコロンビアのカルテル・ゴルフォであった。そのリーダーはダビッ・ウスガ(通称オトニエル)という人物で、コロンビア革命軍の分派である解放人民軍のメンバーだった。オトニエルは潜水艦を建造するのに人がアクセスするのに難しい所としてガイアナとスリナムを選んだ。建造にはエンジニアとしてロシア人とコロンビア人の技師を集めた。もともとコロンビアの革命軍は旧ソビエトとの関係が深ったということから現在のロシアとは接触がありロシア人技師を招聘したということだった。
北米に密輸するにはそれほど大きな潜水艦は必要なかった。全長14-15メートルで十分だった。しかし、ヨーロッパに密輸するには大西洋を横断する必要がある。しかも、建造費や採算性を考慮すると麻薬を6000キロまでは密輸できなければならない。その為にエンジンは2000馬力で25日前後の航海ができることが必須となった。
速力は8ノット(時速15キロ)、乗務員は3-4人、胴体などは繊維強化樹脂を使用した。建造費は150万から200万ユーロ(1億7700万―2億3600万円)で、1回使用しただけで潜水艦は放棄された。500万ユーロ(6億円)を少し切るだけの潜水艦の建造もあるという。積載した麻薬をすべて販売すればその莫大な売上から1回使用するだけで採算に乗るのだ。
「密輸用潜水艦」増加の背後にレーダー性能向上
密輸用潜水艦、元祖はコロンビアのカルテル
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