「桜を見る会」関連文書にまつわる、問題と矛盾と逃げだらけの政府答弁。安倍総理に突き刺さる「9年前のブーメラン」

桜を見る会―平成31年4月13日

個人情報だからと招待者公表から逃げながらも首相官邸自らYou Tubeで動画を公開。(首相官邸You Tubeチャンネルより)

またもや公文書管理の問題に帰着しつつある「桜を見る会」

 安倍晋三首相主催「桜を見る会」については、連日さまざまな報道があり、実際の経費が予算を大幅に超過しているという当初の指摘から、首相の後援会関係者が多数出席した前夜祭との抱き合わせや、消費者庁から行政指導・行政処分を受けていたジャパンライフ元会長へ招待状が送られていたこと等々、問題があちこちに飛び火し、いまだ延焼が続いている。ただ、それだけに問題の全体像や核心がなかなか見えにくくなりつつあるのも事実だ。  そこで一度この桜を見る会をめぐる問題の原点に立ち戻ってみることにしよう。それは本件をメディアが盛んに取り上げるきっかけとなった11月8日の参議院予算委員会での田村智子議員の質疑ではない。その原点は今年の5月21日にある。  この日の衆議院決算行政財務金融委員会において、共産党の宮本徹議員は桜を見る会の招待者の詳細について政府に質問している。政府側はそこで、桜を見る会の招待者に関する文書は保存期間1年未満の資料であり、会の終了後遅滞なく破棄した旨の答弁をしている。(参考:衆議院会議録第198回国会 財務金融委員会 第15号)。  ここ数週間で明らかになったのは、この政府側の答弁がきわめて深刻な問題と矛盾をはらんだものであったという事実である。どういうことか。

公文書を即時廃棄する愚かさ

 そもそも桜を見る会とは、「内閣総理大臣が各界において功績、功労のあった方々を招き、日ごろの御苦労を慰労するとともに、親しく懇談される内閣の公的行事」(参照:5月13日衆議院決算行政監視委員会での政府答弁)であり、「内閣総理大臣の行う表彰」(内閣府設置法第4条第3項30号)のひとつ、つまり国が功労功績を認めたひとびとを讃えるための式典である。  こうした前提に立つならば、先ほどの政府答弁がいかに問題かがわかるだろう。政府の主張が事実なら、われわれはいったい誰に、会への招待という名誉を与えたのかが事後的に一切わからない国に住んでいるということになる。  じつに馬鹿げた話であるし、何より招待者に対してきわめて失礼である。せっかく名誉ある会に招待されたのに、それを証明する公的な手段が皆無なのだから。たとえば将来、桜を見る会の招待者の子孫が、自分の先祖の生前の行跡を知ろうと政府に問い合わせたとして、政府は「名簿は廃棄したからなにもわかりません」とでも答えるつもりなのだろうか。  国家が名誉を与えるべく表彰した方々の名簿を1年未満で廃棄するなど、国家の権威を自ら毀損する愚行でしかないのだ。
次のページ
個人情報を盾とした答弁拒否は成り立たない
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会