Qiitaのアドベントカレンダーに見る「IT技術者」のトレンド
◆2011年(カレンダー数 1 参加者数 25)(
Advent Calendar 2011 – Qiita)
『
Backbone.js Advent Calendar 2011 – Qiita』
2011年唯一のアドベントカレンダーだ。
Backbone.js は、JavaScriptの軽量フレームワークだ。ただ、2019年現在、それほど人気のあるフレームワークではない(参照:
Google トレンド)。どういったカレンダーが作られているかで、IT技術者の興味や関心を知ることができる。
◆2012年(カレンダー数 29 参加者数 579)(
Advent Calendar 2012 – Qiita)
Git や iOS、Ruby のカレンダーがあるのと並んで、Lisp のカレンダーが多い。Lisp は、非常に古参のプログラミング言語で、人工知能のプログラムにも利用される。また「伺か」(デスクトップマスコット)についてのカレンダーもあり、時代を感じさせる。
◆2013年(カレンダー数 82 参加者数 1526)(
Advent Calendar 2013 – Qiita)
一気に多様性が増した。プログラミング言語の種類も増え、サーバー周りや、モバイル関係の話題が増えている。アドベントカレンダーの裾野が大きく広がったのが分かる。
個人的に気になったのは、プログラミングの観点からラテン語を語るという『
ラテン語プログラミング』だ。
◆2014年(カレンダー数214 参加者数 4014)(
Advent Calendar 2014 – Qiita)
プログラミング言語、サーバー周り、Web、モバイル、ゲームと様々な話題が混在している。すでに200を越えているので、満遍なく話題があるといった印象だ。
この年の特徴は、技術の内容ではなく、属性による投稿が一気に増えたことだ。『
Iwate Developers』『
仙台iOS開発者勉強会(SWWDC)』といった地域縛りの投稿が見られる。
また、『
Yahoo! JAPAN Tech』『
ドワンゴ』『
ピクシブ株式会社』といった、
企業主導のアドベントカレンダーも見られるようになった。
企業が広報的に利用し始めたということで、IT技術者のあいだで定着し始めた時期と言えるだろう。
◆2015年(カレンダー数377 参加者数 7161)(
Advent Calendar 2015 – Qiita)
カレンダーの数が増えたため、カテゴリー分けがおこなわれるようになった。カテゴリーの種類と、そのカレンダー数、参加者数を見ていこう。
プログラミング言語 カレンダー数57 参加者数 670
ライブラリ・フレームワーク カレンダー数54 参加者数 517
データベース カレンダー数16 参加者数 110
Webテクノロジー カレンダー数25 参加者数 282
モバイル カレンダー数11 参加者数 138
DevOps・インフラ カレンダー数11 参加者数 163
IoT・ハードウェア カレンダー数16 参加者数 190
OS カレンダー数10 参加者数 86
エディタ カレンダー数 7 参加者数 91
学術 カレンダー数12 参加者数 119
サービス・アプリケーション カレンダー数32 参加者数 408
企業・学校・団体 カレンダー数78 参加者数1165
その他 カレンダー数25 参加者数 198
未設定 カレンダー数23 参加者数 144
「企業・学校・団体」が最も多い。2014年にも少しあったが、この数の伸びは驚異的だ。組織ぐるみの参加が一気に増えたことで、個人参加のイベントから、仲間で盛り上がるイベントへと変わった様子が窺える。これは、個人で参加していたハロウィンが、職場や学校での行事に変わったようなものだ。
また、カレンダー数の多さから、ITエンジニアが「プログラミング言語」や「ライブラリ・フレームワーク」といった、開発のための道具に強い関心を持っていることが分かる。また、最もカレンダー数が少ない「エディタ」は、プログラマーのあいだで宗教論争となることが多い、重要なカテゴリだと言える。
◆
2016年(カレンダー数499 参加者数 9689)(
Advent Calendar 2016 – Qiita)
カテゴリの数字をまず挙げよう。
プログラミング言語 カレンダー数 78 参加者数 852
ライブラリ・フレームワーク カレンダー数 54 参加者数 657
データベース カレンダー数 13 参加者数 89
Webテクノロジー カレンダー数 27 参加者数 246
モバイル カレンダー数 17 参加者数 221
DevOps・インフラ カレンダー数 19 参加者数 161
IoT・ハードウェア カレンダー数 13 参加者数 127
OS カレンダー数 8 参加者数 57
エディタ カレンダー数 12 参加者数 150
学術 カレンダー数 19 参加者数 188
サービス・アプリケーション カレンダー数 41 参加者数 456
企業・学校・団体 カレンダー数145 参加者数2225
その他 カレンダー数 61 参加者数 546
未設定 カレンダー数 1 参加者数 3
「企業・学校・団体」の伸びが著しい。全体の参加者数が2500人増えている中で、「企業・学校・団体」は1000人強増えている。全体の約23%が「企業・学校・団体」での参加となっている。ITエンジニアのお祭りとして定着してきたと言えるだろう。
個人的に興味深かったカレンダーをいくつか挙げよう。「ライブラリ・フレームワーク」の『
ゲームエンジン・ライブラリ・ツールの開発』。「Webテクノロジー」の『
クローラー/Webスクレイピング』。「エディタ」の『
自作エディタをつくる』。「企業・学校・団体」の『
ETロボコン』だ。
基本的に、何かを利用する系より、自分で作ってみる系の記事が私は好きだ。この年は、少し変わったアドベントカレンダーが増えてきたなという印象を持った。
◆2017年(カレンダー数591 参加者数11474)(
Advent Calendar 2017 – Qiita)
前年同様、カテゴリの数字をまず挙げる。
プログラミング言語 カレンダー数 89 参加者数 913
ライブラリ・フレームワーク カレンダー数 61 参加者数 674
データベース カレンダー数 9 参加者数 75
Webテクノロジー カレンダー数 40 参加者数 407
モバイル カレンダー数 13 参加者数 194
DevOps・インフラ カレンダー数 19 参加者数 184
IoT・ハードウェア カレンダー数 19 参加者数 228
OS カレンダー数 6 参加者数 52
エディタ カレンダー数 10 参加者数 130
学術 カレンダー数 22 参加者数 200
サービス・アプリケーション カレンダー数 40 参加者数 497
企業・学校・団体 カレンダー数201 参加者数2900
その他 カレンダー数 62 参加者数 509
未設定 カレンダー数 0 参加者数 0
傾向は前年と変わらないのだが、
「Webテクノロジー」が伸びている。このカテゴリの中で目を引いたのは、『
阿部寛』と『
青空文庫』だ。
阿部寛のホームページは、
とても古い作りだが、その分軽く、高速に表示されることで非常に有名だ。Webサイトの高速化の話題になると、必ずといってよいほど阿部寛の名前が出てくる。カレンダーは、そうした高速化にまつわる話だ。
青空文庫は、全データが
GitHub からダウンロードできる。私もダウンロードして、文章の解析などに利用している。青空文庫は、技術者にも利用しやすいデータなので、活用されることが多い。
また、この年の「
IoT・ハードウェア」には、
スマートスピーカーの話題が複数入っている。そして「その他」のカテゴリには、『
技術系同人誌』が登場している。初の
技術書典の開催が2016年6月25日で、この時期は、第3回の技術書典(2017年10月22日)が終わったあとになる。技術書同人誌界隈が盛り上がっている様子が分かる。
◆2018年(カレンダー数667 参加者数12837)(
Advent Calendar 2018 – Qiita)
まずカテゴリの数字を挙げよう。
スポンサー カレンダー数 8 参加者数 83
プログラミング言語 カレンダー数 84 参加者数 971
ライブラリ・フレームワーク カレンダー数 69 参加者数 704
Webテクノロジー カレンダー数 26 参加者数 268
モバイル カレンダー数 13 参加者数 160
DevOps・インフラ カレンダー数 38 参加者数 364
IoT・ハードウェア カレンダー数 34 参加者数 365
OS カレンダー数 5 参加者数 37
エディタ カレンダー数 5 参加者数 94
学術 カレンダー数 22 参加者数 221
サービス・アプリケーション カレンダー数 48 参加者数 644
企業・学校・団体 カレンダー数248 参加者数3665
その他 カレンダー数 60 参加者数 568
未設定 カレンダー数 7 参加者数 9
「データベース」というカテゴリが消えた。しかし「OS」や「エディタ」は消えていない。そして「
スポンサー」というカテゴリが増えた。プレゼントや賞品が出る投稿募集である。お祭りも、協賛がつきはじめたというわけだ。
個人的には、「学術」の『
データ構造とアルゴリズム』が盛り上がっていたのが興味深かった。