「桜を見る会」問題で官邸前で抗議集会。改めてその異常さを問う

野党議員の資料要求の約1時間後にシュレッダーの利用を開始

・11月15日 安倍首相が記者団へ対し、野党が求める予算委員会の集中審議について「国会から求められれば、出て行って説明するのは当然のことだ」と発言。 ・11月20日 参院本会議で、招待者選定について「私の事務所が内閣官房の推薦依頼を受け、参加希望者を募ってきた。私自身も事務所から相談を受ければ意見を言うこともあった」と自らの関与を認めた。  続いて、紙智子参院議員(日本共産党)から「(8日の予算委員会で)虚偽答弁だったのか?」と追及されると。首相は「招待者の最終的な取りまとめには一切関与しておらず、虚偽答弁との指摘はあたらない」と述べた。 ・同日 衆院内閣委員会において、宮本徹衆院議員(日本共産党)が「桜を見る会」の招待者名簿の資料要求をした同日5月9日に、名簿を廃棄していたことが発覚。  宮本議員は「あまりにもドンピシャリだ。『わかりません』と国会で言い逃れするために、廃棄したのではないか」と追及したが、内閣府職員は「大型のシュレッダーを使おうとしたところ、各局の使用が重なって調整した結果、連休明けになった」と回答し、隠蔽を否定。  また、答弁に立った菅官房長官は、黒岩宇洋衆院議員(立憲民主党)の「安倍夫人も関わったのか?」との追及に対し、「安倍事務所において幅広く参加希望者を募る過程で、夫人からの推薦もあったのは事実だ」と答えた。 <桜を見る会 安倍首相の推薦約1千人 2019.11.20> ・11月25日 参院行政監視委員会において、特定商取引法違反容疑で警視庁などから捜査を受けている「ジャパンライフ」(東京都千代田区、山口隆祥会長)が、安倍首相から2015年の「桜を見る会」に招待されたことを宣伝に利用していた事実について、田村智子参院議員(日本共産党)が追及。  岡田直樹官房副長官は、「個々の招待者については、個人に関する情報であることを鑑みて回答を差し控える」と発言した。 ・11月26日 与野党の筆頭理事が国会内で協議し、野党が首相出席の集中審議開催を求めたが、与党が首相の出席を拒否し物別れに。 ・11月28日 内閣府がシュレッダーの使用者記録表を追及本部に提出し、野党議員の資料要求の約1時間後にシュレッダーの利用を開始していたことが判明。  また、菅義偉官房長官が記者会見で、招待名簿の電子データも「復元できない」と発言。復元できない理由は、技術的な理由か、ルール上の理由か明言しなかった。 ・11月29日 熊谷裕人参院議員の質問主意書に答える形で、首相夫人は「私人」という閣議決定がなされた。

経緯から見える問題点

 与党の一連の対応を流れにしてみると、ずさんな答弁や国会審議への不誠実さが浮かび上がってくる。特に1番の問題点は、首相や官房長官が国会や記者会見の場で、平然と嘘をつくことだ。  8日の予算委員会において安倍首相は、「招待者の取りまとめには関与していない」と明言した。しかし、野党やメディアの追及が進むに連れ、首相が関与していた客観的事実が次から次へと発見され、結局、20日の本会議において「(招待者選定について)私自身も事務所から相談を受ければ意見を言うこともあった」と自らの関与を認め、8日の発言を修正した。  また、腹心の菅官房長官も13日午前の記者会見で「首相枠、政治枠はない」と発言したが、わずかその数時間後の記者会見で「慣例として、官邸内や与党にも推薦依頼を行っていた」とその存在を認めた。  さらに、首相は15日に記者団へ対し、野党が求める予算委員会の集中審議について「国会から求められれば、出て行って説明するのは当然のことだ」と力強く語っていたにも関わらず、26日の与野党協議で、与党が首相出席の集中審議の開催を拒否し、臨時国会が延長される気配もないため、安倍首相は「桜を見る会」問題から逃げ切るつもりだ。なぜこのように、直ぐにバレる嘘を国会や記者会見の場で平然とつくのか全く理解できない。  もう一つの問題点は、公文書である招待者名簿を廃棄したことだ。名簿が内閣府において保存1年未満の文書だったとしても、共産党議員からの資料要求の1時間後に廃棄処分を開始したのは、あまりにも不自然で情報隠蔽だと疑われても仕方ない。さらに、電子データに関しても復元できない理由を「技術的な理由」か「ルール上の理由」のどちらか明確にしない点にも不信感が残る。  「桜を見る会の話だけを議論するよりも、他に審議すべき重要な話題があるだろう」という意見を耳にすることがあるが、実際には「桜を見る会」だけでなく、本議会や委員会では様々な議論が行われている。「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律案」をはじめとした13本の法律が既に成立し、77本の法律が審議中だ。  「桜を見る会」問題を長引かせているのは野党ではなく、真摯な答弁をせずに、のらりくらりと追及を躱し国会閉会まで逃げ切ろうとしている与党だ。安倍総理は森友問題や加計問題の時の悪い成功体験を引きづるのではなく、国会、そして国民に対し真摯に向き合い説明責任を果たすべきだ。 <文/日下部智海>
1997年生まれ。明治大学法学部卒業。フリージャーナリスト。特技:ヒモ。シリア難民やパレスチナ難民、トルコ人など世界中でヒモとして生活。社会問題から政治までヒモ目線でお届け。Twitter:@cshbkt
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