「賃金ショック」、いよいよ米も利上げ出来ない!?

吉田 恒氏

吉田 恒氏

 9日発表の米12月雇用統計は、「賃金ショック」の反応となった。これにより、改めて「米国も利上げはできないのか」といった見方が広がる可能性は注目される。  雇用統計では、普通は雇用増加数(NFP)や失業率が注目されるが、今回については平均時給の結果が大きな話題になった。これには、FRBが原油価格の急落などにより米国でも低インフレへの懸念が浮上するなかでも利上げを始める拠り所こそが「賃金上昇」と位置付れていたからだ。  1月8日付け「スポットコメント」では、昨年12月FOMC議事録について、以下のように指摘していた。 「原油安やドル高によって物価が下押しされ、しばらくの間FRBの目標を下回る可能性が高いとされました。ただ、インフレ率が2%の目標に向かって上昇すると十分に自信が持てれば、(食料とエネルギーを除く)コア物価が現在の水準にあっても利上げを開始する可能性があるとも指摘されました。賃金上昇などが確認される場合には利上げを始める可能性があると解釈でき、ややタカ派的な内容と言えます」。  ところが、「12月は平均時給が前月比で0.2%減の24.57ドルと、比較可能な06年以降で最大の落ち込みとなった」(11日付けブルームバーグ)。ブルームバーグは、市場参加者の以下のようなコメントも紹介していた。「雇用は量的には強かったが、質的には問題があった。賃金下落は本当に驚きだ」。  低インフレへの懸念に加え、「賃金ショック」となったことで、米利上げ見通しも後退した。政策金利を反映する米2年債利回りは、昨年12月中旬以来の0.5%台半ばまで急低下となった。いよいよ、米国も利上げを始められないかもしれないとなっていく可能性は改めて注目される。 (了)   ◆1月の会場及びWEBセミナーのご案内 1月14日=「為替の学校」M2JFXアカデミア「予測編」第1部 1月23日=月例WEBセミナー「マーケット先読みLive!」 http://www.m2j.co.jp/seminar/ 【吉田 恒氏】 1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など ●ツイッター http://mobile.twitter.com/yoshida_hisashi ●毎週動画 http://www.m2j.co.jp/fx_channel/ ●FXの学校「アカデミア」 https://www.m2j.co.jp/mp/my_fxacademia/
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会