令和元年の国民年金の保険料は、先述したように毎月1万6410円である。将来もらう年金の金額は同じなのに、今のシステムでは、
年収が100万円以下の人の負担は1万6410円だが、
所得が1000万円であれば1万0994円、1800万円以上であれば9846円と4割も低いとなったら、これは公平だろうか?
年収の低い人が多く払い、年収の高い人が少なく払う。そんなバカなことがあるわけないと思われるかもしれないが、これが今のシステムではまかり通っているのだ。
それは、
国民年金が社会保険料控除の対象になっているからだ。年収の高い人が国民年金を払うと所得税が大幅に割引される。確定申告でお金が戻ってくるからだ。
例えば、所得が1000万円の人の所得税率は33%。100万円所得が増えると、33万円、さらに所得税を払う。100万円減れば逆に33万円税金が少なくなる。国民年金の保険料は全額、社会保険料控除として認められ、所得が年金保険料を納めた金額だけ減る。1万6410円を12ヶ月、19万6920円払ったとなると、例えば、1000万円の所得の人は、1年間に払った国民年金の保険料、19万6920円所得が少なかったとして再計算される。つまり、払った額の33%の6万4983円が戻ってくる。1万9620円が6万4984円値引きされているから、毎月の保険料として実質払ったのは月1万0994円となるのだ。
一方で、所得が月20万円、年240万円の人は10%の所得税率となり、支払った19万6920円を確定申告しても戻ってくるのは、その10%の1万9662円でしかない。所得が1000万円の人の実質負担が月1万0994円に対し、所得が月20万円の人は1万4769円となる。完全な逆転現象だ。
さらに、年収のもっと低い人は国民年金の保険料を頑張って納めたとしても、税金は全く戻らないことが多い。所得税をほとんど納めていないからだ。
もう一度申し上げる。将来の老後のための備えだと、年収200万円くらいの人、月の収入が16万円程度の人にとって、その1割、毎月1万6000円以上も年金の保険料を払うか払わないかは生活が激変する。それこそ毎日のおかずを減らしこまめに電気を消すといったような生活を求められる。一方で2000万円の所得があり月1万6000円の負担は何でもない人は、確定申告でその4割が戻ってくる(実際は住民税も安くなるので割引率はもっと高い)のだ。
これはおかしい。
私は、国民年金を広く多くの人にきちんと入ってもらいたいのであれば、年収に応じた負担にするべきだと思う。例えば、年の所得が2000万円の人には3万円払ってもらったとしても、確定申告の税金の還付で戻ってくるので、年収が100万円以下の人とやっと負担は同じなのだ。
国民年金は社会保険制度であるが、今やその財源の半分は国税なのである。社会福祉制度の一翼も担ってる。そして、この年金制度はシニアの生活の基礎になるものである。それならば、
所得に応じて負担を変えるのが当たり前ではないだろうか?
手元にあるデータでは、第一号被保険者の国民年金保険料の納付率は68・1%(2018年度)。ただし、この数字には払いたくても払えない人で公的に免除や猶予を受けている人を除外している。加入者1471万人のうち、免除や猶予を受けている人が617万人もいるのだ。払えない人がそんなにいる制度は破綻していると言っていい。そういう人を除くと、実質的な納付率はほぼ40%。半数以上が払ってない、払えないのだ。
国民年金の保険料は、国民年金税として徴収した方がいいと思う。税金として、所得に応じた負担に改革されるべきだ。年収100万円なのであれば、月の負担は1000円程度にする。それなら、多くの人が将来のために負担をするだろう。一方で高額所得者は多少高くなったとしても、負担ができないということにはならない。税とすれば、支払わなければ脱税である。間違いなく納付するだろう。
年金支給年齢を引き上げたり、毎月の支給額を減らすような姑息な手段をするのではなく、本当に年金が必要な経済的弱者こそ、こぞって入りたくなるような制度に改めるべきなのである。それが安定政権が行う義務である。
年金制度にはまだまだ改革すべきおかしな点が放置されたままだ。次回は今回の話を続きをさせていただきたいと思う。皆さんからのご意見、ご感想もお待ちしている。
◆佐藤治彦の[エコノスコープ]令和経済透視鏡
<文/佐藤治彦>