Switch 向けゲームを個人で作って、デジゲー博に出展してみた

デジゲー博への出展、デジゲー博とは何か?

 11月17日の日曜日に、秋葉原UDXで開催されたデジゲー博2019に出展してきました。Nintendo Switch 向けの自作ゲーム『Little Bit War(リトルビットウォー)』の試遊展示が目的です。3日前の木曜日に商品のチェックが終わりマスターアップしたので、晴れて完成品を披露することができました。
デジゲー博の筆者ブース

デジゲー博の筆者ブース(筆者撮影)

 さて、デジゲー博というイベントですが、知らない人の方が多いと思います。東京ゲームショウのような大きなイベントではないので当然です。デジゲー博には、「同人&インディーゲームオンリー展示・即売会」というサブタイトルが付いています。そのことから分かるとおり、同人や小規模デベロッパーが、電源ゲームの展示や即売をおこなうイベントです。  2013年に第1回がおこなわれ、毎年1回ずつ開催されており、今回のデジゲー博2019が7回目になります(参照:過去の開催)。いわゆる同人誌即売会に分類されるイベントですが、法人でのブース参加があったり、電源タップがあってパソコンやゲーム機を直接動かせたり、音を鳴らせたりといった特徴があります。通常の同人誌即売会では「電源なし」「音を鳴らしては駄目」なところがほとんどなので、ゲーム系展示即売会ならではの特徴だといえます。  また、ゲームだけでなく、ミドルウェアと呼ばれる開発ツールや、ゲームの素材の宣伝・販売をしているところもあります。たとえば、株式会社モリサワのようなフォントの会社や、業界では有名な株式会社ウェブテクノロジなどが出展していました。また、Game Server Services 株式会社 のように、ゲームサーバーの宣伝をしているところもありました。  このイベントですが、第1回は97サークルが参加して、来場者数は約600人。去年の第6回は268サークルが参加して、来場者数は約2000人。今年の第7回は、253サークルが参加しています。出展応募の倍率は2倍ということなので、かなりのサークルが落選しています。また、去年参加した人の話だと、来場者数はおそらく同程度ということだったので、今回も2000人前後の人が来たのだと思います。  会場では、パソコン向け、スマホ向け、家庭用ゲーム機向けの各種ゲームが展示即売されており試遊もできます。サークルによっては、会場でのスコアランキングをやったりしていました。コミケなどの他の即売会と大きく違うのは、試遊が非常に盛んにおこなわれているところだと感じました。  このデジゲー博ですが、入場料が1500円かかります。そのため来場者の最大の目的は、試遊なのかなと思います。買うだけならダウンロード販売で入手すればよいです。しかし、ネットでの購入では試遊はできません(体験版があればできますが)。それに、動いているゲームを見て、それらをまとめて一度に試遊できる機会はそうそうありません。開発者に直接話を聞きながらプレイできるのも、イベントならではです。  1500円という金額のハードルと、実際に会場まで足を運ぶという手間のハードルがあるため、来場者のほとんどはガチのゲーム好きという感じでした。試遊も非常に熱心で、好みのゲームをガッツリと遊んでいる様子でした。  私のサークルの試遊でも、「1ステージぐらい遊ぶかな」と思っていたら、5ステージある初心者モードを全部クリアする人がそれなりにいて、非常に高いやる気を感じました。  一般向けの開催時間が、11時から16時と5時間だったのですが、最後まで人が多く、どこも試遊が稼働している状態でした。

Switch 向けゲームを、1人で9ヶ月ほどで作ってみた

 さて、今回出展した Nintendo Switch 向けのゲームは『Little Bit War(リトルビットウォー)』という、RTS(リアルタイムストラテジー)と呼ばれるタイプのゲームです。「1ステージ5~10分で遊べる高速RTS」というキャッチフレーズで、1画面で完結して、ちびキャラがわらわらと戦争するゲームです。  12月頭ぐらいにニンテンドーeショップでダウンロード販売しようと考えているこのゲームですが、開発の切っ掛けは1年前の会話でした。  2018年の10月末に、私は新潮社から『レトロゲームファクトリー』という、レトロゲームの移植会社を舞台にした、お仕事&ミステリー小説を出しました。その元ネタのひとつである『自転車創業』さんの忘年会に、12月9日に参加したところ、代表のかざみみかぜ。さんから「柳井さん、Switch でゲームを出しなよ。取り引き先が『Play,Doujin!』ってのをやっているから、Switch 向けゲームを出せるはずだから」と言われました。 『Play,Doujin!』は、同人やインディーのゲームを、家庭用ゲーム機で出すプロジェクトです。その話を聞き、「いいですね、『レトロゲームファクトリー』の宣伝にもなるし」と答えました。  Switch のゲームを作れば『レトロゲームファクトリー』が、「家庭用ゲーム機向けのゲームを、1人で開発した人が書いた小説」と言い張れるようになります。また、この本自体が、レトロゲーム移植会社のお話なので、家庭用ゲーム機への移植は、移植つながりで何か相乗効果があるかもしれません。  というわけで、運営元のメディアスケープ株式会社にアクセスしたところ、「進めよう」ということになりました。  そして年が明け、2019年の1月にプロジェクトが始動しました。1月の下旬には開発機が届き、ドキュメントの読み込みを開始。ハードウェアの特性の理解と、プログラムの仕様の把握をしました。そして1月の末から1週間ほど、検証用のテストプログラムを書き、各種機能の挙動を確認しました。  Switch 用に移植する同人ゲームは、2017年の冬コミで出した『TinyWar high-speed』という8bit風のRTSです。ただ、そのまま Switch に移植するには、ファミコン風だと対象ユーザーが狭すぎるだろうということで、グラフィックをリッチにして、名前も分かりやすく『Little Bit War(リトルビットウォー)』にすることに決めました(8bit風グラフィックで遊ぶモードも付いています)。 【TinyWar high-speed】
tinywar

Tinywar high-speed

Tinywar画面

Tinywar high-speed

【Little Bit War(リトルビットウォー)】
Little Bit War

Little Bit War

Little Bit War画面

Little Bit War画面

 移植にあたって、プログラムも大幅に変更する必要がありました。元のゲームが、HTML5とJavaScriptで作っていたので、家庭用ゲーム機への移植のために、C++でプログラムを全部書き直さないといけなかったからです。  また、ゲーム画面のサイズも違い、マウスからコントローラーに操作方法を変える必要がありました。そうした設計上の見直しが色々と発生しました。自分の書いたプログラムを、自分で移植するのでハードルは低いですが、やるべきことは多いです。  ドキュメントの読み込みと実験に2週間を費やし、2月9日に実際の開発を開始。その日はまず、タイトル画面を作りました。他の仕事をしながら断続的に作業をして、22日間の実働で、3月25日にとりあえずゲームが動くところまで実装を完了。さらに実働7日間を経て、4月7日に一通りゲームの実装を終えました。  そして4月11日から Switch 向けグラフィックの作成を開始。実働17日間の作業を経て、6月17日に画像の差し替えが完了しました。また、6日間の作業で表示の調整もおこないました。  この時点で、ゲーム自体は一通り完成しました。しかしゲーム開発は、ここからが本番です。可能な限りテストをして、ストレスを取り除き、ゲームとして面白くなるようにパラメータや挙動を調整していかないといけないです。  7月16日から10月30日にかけて、34日間かけてゲームのブラッシュアップをしました。この期間で、ゲームの遊び心地は大きく変わりました。その後、マスターロムを作成してチェックに出して、最終的に11月14日にマスターアップして、17日のデジゲー博に間に合いました。  開発前の準備に14日間、ゲームの作成に19日間、グラフィックの作成と差し替えに25日間、テストプレイとブラッシュアップに34日間。他の仕事と並行して、発端から1年以内に家庭用ゲーム機向けのゲームを作ることができました。

デジゲー博に、自作Switch向けゲームを試遊・展示してみた

 9ヶ月間、実働102日間かけてゲームは完成しました。そして完成したゲームを、デジゲー博に試遊・展示したわけです。  デジゲー博の出展は気を使いました。電源を使う出展は、機材トラブルや想定外のエラーが起きやすいからです。  今回は、Switch 本体を2台並べて、1台は Switch を机に置いて使うテーブルモードで、「Nintendo Switch Proコントローラー」(通称プロコン)を有線で繋ぎました。もう1台はドックにさして、TSUKUMO さんに借りたモニターに接続して、やはりプロコンを有線で繋ぎました。  プロコンを使い、直接 Switch 本体に触れないようにしたのは2つ理由があります。1つは盗難対策です。悪意ある人が1人でもいれば、盗難という最悪の事態になるからです。そのため Switch 本体は、養生テープで机に固定して動かせないようにしました。また、有線で接続しているのは無線の混線対策です。会場では Switch 向けの試遊をしているところが複数あり、それらのコントローラーが想定外の機械と接続してしまう可能性があったからです。  大きな画面では人の注目を引く。そして、Switch 本体でプレイ可能にすることで、Switch 向けゲームだと直感的に分かってもらう。そうした構成にしたのですが、テーブルモードでプロコンを使うのには、ひとつ問題がありました。それは充電の問題です。デジゲー博の一般向け開催時間は5時間あります。従来モデルの Switch だと、電池の持ち時間は約2.5時間~6.5時間なので、足りない可能性が高いです(参照Switch Q&A)。  そこでHORIの「テーブルモード専用ポータブル USB ハブスタンド 2ポート for Nintendo Switch」を購入して、充電しながらテーブルモードでプロコンで遊べるようにしました。Switch は、本体との接続が USB Type-C なので、ただの接続でもけっこう高い機器が多いです。プロコンやハブスタンドなど、出費を重ねながらイベントに臨みました。  いろいろと考えながら準備をしたのですが、デジタル系はきちんと動かないと、イベント期間中ただ立って待っているだけになり、出展が無駄になります。機器を借りていた関係もあり「動かない」は避けたかったので、きちんと試遊できてよかったです。  今回の出展を通して、もっと大きなイベントで大量に機器を並べて展示をする人や会社は、相当気を使うだろうなと思いました。何はともあれ、デジゲー博というイベントへの出展は初めてだったのですが、周りの人にサポートをしてもらって何とか乗り切れました。たくさん遊んでもらい、ポジティブな感想をもらえたのでよかったです。  というわけで、出展者目線でデジゲー博をレポートしてみました。こういうイベントがあり、出展者はこんな準備をして出展しているということを知ってもらえればと思います。 <文/柳井政和>
やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。
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