「予防拘禁」という、治安維持法のような制度が適用されている
長期収容が問題となっている東日本入国管理センター(茨城県牛久市)
そもそも、
「入管法違反以外の罰則によって有罪判決を受けた者」であっても、刑法による刑罰を受け、その刑期を終えた後も、無期限に拘束してよいのか、という問題がある。日本の刑法の大前提として、まだ犯罪を犯していないのに、「過去に犯罪歴があるから」「治安維持のため」といった理由で人を拘束することはできないのだ。こうした問題について、今月8日、衆院法務委員会で
初鹿明博衆院議員は法務省を問いただした。
「(法務省の)
『我が国の安心安全を確保する観点から(入管収容施設の被収容者の)仮放免を認めるべきではない』という理屈はおかしいと思うのですよ。日本人が犯罪を犯して、刑期を終えて社会に出る、こういう人がいると安心安全に支障があるから出さないようにしよう、ということにはならないですよね。これは
事実上の予防拘禁ですよ」(初鹿議員、今月8日の衆院法務委員会での質疑)
予防拘禁とは、刑期を終えても「再犯の恐れがある」として引き続き、拘束し続けるもので、
戦前・戦中に政府の方針に異を唱える者への弾圧で猛威を奮った治安維持法の下、思想犯に対して適用された。そして戦後、治安維持法は悪法として廃止されている。
「治安維持法も予防拘禁という制度がありましたが、2年の期限があり、2年経つと裁判所が入って(さらなる予防拘禁をするか否かの)更新の手続きをしていました。一応、期限があって、第三者による更新の手続きがあったのですよ。
外国人の長期収容の場合、期限もないし、長期収容をする判断も全て第三者が入らずに、入管当局が行っているわけですよね。私は、これはいかがなものかと思うんですよ」(同)
初鹿議員は、さらに治安維持法での予防拘禁が適用された人数が62人、そのうち2年延長の更新の適用が行われた人数は4人であったことを指摘。「悪名高い
治安維持法でも2年以上拘禁されたという人は、4人しかいないんですよね。ところが、現状、
入管の収容者で、令和元年6月1日の時点で2年以上って251人もいるんですよ(中略)私は非常に問題だと思うんですよ」(同)
つまり、入管による2年以上の長期収容の対象者は、治安維持法の予防拘禁(2年以上)と比較して、約63倍もいるということだ。
国会質疑を行う初鹿議員(衆議院インターネット審議中継より)
初鹿議員は「収容の上限を6か月として、それ以上は、裁判所など第三者を入れて収容を更新するか否か判断するという制度に変えるべき」と提案。だが、森まさこ法務大臣は機械的に現状肯定しただけであった。
入管による外国人の長期収容については、国際社会からも厳しい視線が向けられている。
国際的な人権団体アムネスティ・インターショナルは、10月8日、「恣意的拘禁であり、日本に対しても法的拘束力のある市民的政治的権利に関する国際規約第9条などの国際法に違反する」と指摘。「東京オリンピックのための安心安全の確保」という日本の主張がやり玉にあげられるのも、時間の問題であろう。それは、平和と人権、平等を尊ぶオリンピック憲章にも反するからだ。
初鹿議員は8日の法務委員会で、「現状、就労できない仮放免者が就労できるようにすべきでは」とも提案していた。帰るに帰れない事情のある外国人達に就労を許可しない現行の制度こそ、彼らの一部に生活に困窮して犯罪を手を染める者が出てきてしまう状況をつくっている。
安倍政権は、5年間で最大34万5000人の外国人労働者を受け入れる方針だ。ならば、すでに日本社会に溶け込み、日本語も堪能である在日外国人を人材として活用すべきだろう。帰国できない事情のある在日外国人にとっても、人手不足に悩む日本経済にとっても双方に利益があることだからだ。
<取材・文/志葉玲>