密室での孤独な育児の解決策としては、子育てをパパとママ、あるいは家族だけで取り組むのではなく、第三者を巻き込むやり方がある。
そうした環境で育ったのが、映画監督の加納土さんだ。自身の生い立ちをテーマとし、関わった人にカメラ片手に会いに行く様子を収めた映画「沈没家族」を制作したことで有名だ。
加納さんはシングルマザーの家庭に育ったが、お母さんは「子育てをみんなでしたら楽しいのではないか」と考え、「共同保育人を募集します」とのビラを近所に配るというユニークな行動に出た。以来、加納さんの家には見知らぬ大人がやってきて、交代で彼のお世話をするようになる。多くの人が持つ家族像を壊す、斬新なアプローチだ。
「楽しい思い出ばかりでしたね。記憶に残っているのが、小学生の時の授業参観。私にはたくさんの『父親』(編集部注:共同保育人の男性たちのこと)がいるので、6人くらいの大人が入れ替わりでクラスに来ました」
と話し、会場の笑いを誘った。
加納さんが育った環境を見て司会の今さんは「お母さんは、それだけ世界を信頼していたんでしょうね」と話し、「パパとママだけが子育てをするのではなく、家族以外の大人が共同で子育てするのはいいよね」と賛同していた。
ライターの林さんは加納さんの育った環境に賛同し、「自分の子どもではないから力まずに子育てできる面はありそう。誰でも子育てに参加できる体制が社会に整ったら、子育てがもっと楽になると思う」と話していた。
子連れ出社で「社会から切り離された感覚がなくなった」
イベントの最後には、おっぱいサミット恒例の授乳ショーが行われた。乳児を持つ3人の女性が壇上で授乳服を使って実際に授乳をした。
外からは、赤ちゃんを抱っこしているようにしか見えず、授乳をしているようにはまったく見えない。これだけプライバシーが確保されれば外出をためらわずにすみそうだ。
また、3人はいずれも子連れ出社の経験者でもある。子どもを連れての仕事は難しいイメージが強いが、授乳服のようなツールや、会社の理解といった環境が整えば実現できるケースもある。
女性たちは、
「子連れ出社のおかげで子どもが大人とたくさん接することができ、周りに慣れるスピードがはやいいように思えます」
「社会から切り離されたという感覚がなくなりました」
など、子連れ出社のメリットを笑顔で話していた。
<取材・文/薗部雄一>