あまりに酷いペット店頭生体販売の実態。動物好きのスタッフも壊す惨状

病気が蔓延。吐血や血便はしょっちゅう

「“新商品”として仕入れられてくる子犬や子猫も同じ」と、郊外のペットショップに勤めるCさんは語る。
段ボール箱

バックヤードに並ぶ段ボール箱の中には、”新商品”として仕入れられた子犬や子猫が。オークション会場から運び込まれたまま放置されていることも

「“新商品”は、呼吸用の小穴を開けただけの狭い運搬用段ボール箱に入れられます。長距離・長時間の移動を強いられて、店に着いても箱から出してもらえず、そのまま放置されていました」  劣悪な環境が犬猫の心身の健康に及ぼす影響を考えれば、病気が蔓延することは想像に難くない。 「吐血や血便はしょっちゅうのこと。病気になっても病院に連れていかず、獣医師を呼ぶこともしません。経営者の指示で、医療知識のない店員が市販薬を与えるだけ。仕入れた翌日に死ぬ子も珍しくありません。先天性の脳疾患が見つかった子猫が、治療もしてもらえず1年間放置されて死んだこともありました」(Aさん) 「仕入れた当初は元気でも、ストレスで鳴きすぎて声はかれ、下痢をしたり皮膚病になったりと、次第に体調を崩していく。心身ともに健康な子なんて、ほとんどいなかったと思います」(Bさん)  仕入れた命、売れ残った命をモノ同然に放置し、弱って死ぬのを待つかのごとく扱う。その光景はまさに生き地獄そのものだ。

動物好きなスタッフの心も病むペットショップの現実

 動物が好きでペットショップで働き始めるが、その実態に絶望して辞めていくスタッフもいる。 「少しでも環境を改善してやりたくて、すぐには辞められませんでした。でも、半年しか持ちませんでした。店を辞めた今でもバックヤードのひどい光景が脳裏に焼きついていて離れません」(Aさん)  また、人手不足や過重労働が、犬猫の悲劇を助長しているケースもあるようだ。 「私が勤めていた店舗は猫カフェも併設していました。販売する約40匹の犬猫とカフェの猫約20匹の世話を、2~3人の店員でしなければなりません。水替え、餌やり、トイレの世話で手いっぱいで、とても体調管理までは手が回らないんです」(Cさん) 「人手不足で休みも取れない。そんな激務が続くうち、感覚が麻痺して犬猫が商品にしか見えなくなってくる。このまま働いていたらおかしくなると感じて辞める人もたくさんいました。動物を商品として扱っている以上、“まともなペットショップ”なんて存在しえないと思います」(Bさん)  残酷な光景を目の当たりにし、無力な自分を責める。本当に動物を愛する人ほど精神的に追い込まれていく。ペットショップの裏側では、動物だけでなく働いている店員の心までもが蝕まれている。 取材・文/柳沢敬法 写真/大房千夏 谷口真梨子 日本動物福祉協会
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