それぞれ好きな飲み物を持ち寄り、好きな時間に入退室できる、自由度の高い句会だ
定型(五七五)や季語のルールに縛られない「自由律俳句」がアリなのも、屍派の特徴のひとつだ。
「自由律といっても日本語のリズムがあるんです。だから五七五が基本。でも、それに縛られずに自分のリズムで詠むほうが大事です。季語も、歳時記に載っているような言葉を覚える必要はなく、句に季節感を感じられたらより良い、ということ」(北大路氏)
この句会には、「充実した人生を送っている人は、絶対に来ませんね」と北大路氏は語る。
「参加者は、依存症やうつ病の患者、ニート、女装家などいろいろ。世間からはみ出した人たち、生きづらさを感じている人たちが多い。僕は“アウトロー”というのは、悲しみ、苦しみ、妬み、怒り、愚かさなどをすべて受け入れる“寛容さ”だと思っているんです」
参加者の一人はこう言う。
「『死にたい』とか『殺したい』とか、普通の句会じゃとても言えないですよね。でもここでは、そういう暗い感情を吐き出して、みんなで笑うことができる」
「教養は不要。俳句は誰でも詠める」というのが北大路氏の持論だ。
「俳句は心情を吐露して昇華する道具になる。これまで俳句とは無縁だった人たちに、少しずつ句を詠む楽しさを伝えたい」
【俳人 北大路 翼氏】
1978年生まれ。歌舞伎町俳句一家「屍派」家元。ルールにとらわれず、心の闇や世の中への不満、ときにはエロも句に綴る「アウトロー俳句」を確立。11月14日に
半自伝的エッセイ『廃人』(春陽堂書店)を上梓
<取材・文・撮影/櫻井れき 北村土龍>