「中国人タワマン爆買い」煽りは時代遅れ。中国人不動産投資家はここに投資している

再建築不可物件でも問題ナシ

葛飾区や江戸川区あたりに多い、接道義務をクリアしていないために再建築不可となっている一戸建ての中古物件です。駅から徒歩10分で築40年くらい、20坪程度の物件なら1500万円前後で見つかります。ただ、再建築不可物件はローンが組めないので買い手がつきにくい。しかし日本で不動産投資をする中国人投資家の多くはどうせ即金なのでネックにならない。リフォームに700万円ほどかけて外国人向けに貸し出せばすぐに借り手は見つかるし、利回り8%以上は可能。こうした物件の仲介はリスクゼロで利益を得られるので、一番おいしいのはわれわれ仲介業者かもしれません(笑)」(同)  中国人オーナーの不動産物件の内装を手掛けることが多い、小谷健次郎さん(仮名・55歳)は、別の視点から彼らの賃貸経営の特徴について話す。 「中国人オーナーの賃貸物件はリフォームといっても最低限ということが多い。お金をかけない分、安い家賃で貸し出しているので、人気物件となり空室リスクは低い。また、不動産業者が言うには中国人オーナーの賃貸物件は審査が緩いのも特徴。日本人が所有する物件ではNGも多い外国人の入居がOKなのはもちろん、一人暮らし用物件に複数で入居することや、又貸しにも寛容。最近は審査が通りにくい非正規の日本人低所得者層の借り手も増えています」

日本の社会状況などに精通して投資先を変えている

 実はこうした背景には中国人投資家層が日本の社会状況をかなり冷静に分析しているフシがある。  池袋周辺を中心にホテルを所有する中国人投資家の王義春さん(48歳・仮名)はこう語る。 「セカンドハウス代わりにでもタワマンを買い漁る中国人がいるとしたら、それは投資初心者のような人でしょう。いま日本は少子高齢化が進んでいます。我々が目をつけているのは高齢者養護施設です。これには2つのメリットがあって、高齢者が増える中ではブルーオーシャンだという点です。そして、これらの施設については、日本でノウハウを積めばいずれ中国も少子高齢化の時代を迎えたときに、本国でもビジネスチャンスに成り得るという点です」  また、前出した賃貸物件だけではなく、シェアハウスや寮の事業にも注目しているという。 「安倍政権が入管法を改正したこともあり、今後は外国人労働者や留学生の受け入れが増えていく流れにあります。しかし、そんな流れにも関わらず、外国人可の物件が少なすぎる。部屋を探すのも大変なんです。だから、外国人向けの学生寮やシェアハウスを作ってます。各国の学生向けの寮は、コスト面や国際化の流れについていこうとする日本人学生にもメリットがあります。そう考えると、『日本人が都心に住めなくなる』よりも、むしろあまりお金がない日本人の若者や学生には『住みやすくなる』かもしれませんよ」  「タワマン爆買いで日本人が都心に住めなくなる!?」などと煽るメディアは、果たしてどれほどの日本人が都心部のタワマンを購入できる余裕があると思っているのだろうか。お門違いの煽り報道の一方で、中国人を筆頭とした外国人投資家は、日本人が切り捨てていた顧客の受け皿となり、高齢化や資金力不足で死にかけている日本の中古不動産価値を再生してビジネスに繋げているのだ。 取材・文/奥窪優木 西谷格 根本直樹 森野広行 牧野早菜生(週刊SPA!編集部) 撮影/加藤岳 尾藤能暢
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