ネタニャフ首相は数週間前にも一部閣僚を前に「トランプは少なくとも2020年11月の大統領選挙までイランを前に如何なる行動も起こさないだろう」と述べたという。イスラエルはイランを前に単独で行動を取らねばならないということである。
イスラエルはトランプ政権への期待が次第に薄らいでいるという。特に具体的にそれ認識するようになったのは、トランプがシリアにおける米軍の同盟であったクルド部隊を見放してトルコ軍の前に置いてきぼりにした時からであるという。(参照:「
HispanTV」)
イスラエルはシリア南部の米軍基地アル・タンフは戦略的及び地政学的に重要で是非ととも留まるように米国に要望したが結局それは受け入れられなかった。米国政府はイスラエルには損害を与えるようなことはしないと約束していた。そうであればこそ、なお一層アル・タンフに留まるべきであった。
この米軍の撤退によって、最大の恩恵を受けることになったのはイランである。それは同時にイスラエルに協力して来た民兵部隊を危険にさらすことになった。それに加えてトルコがシリアに進攻開始したことによって同様にロシアとシリア政府軍も恩恵を受けることになった。
サウジが石油施設の攻撃を受けた時、それがイランからのものであるということが明確であったにもかかわらずトランプ大統領からは如何なる回答もなかった。
イスラエルのヘブライ語紙イェディオト・アハロノト(Yedhioth Ahronoth)にてジャーナリストのシモン・シーファーは「ホワイトハウスの主でこれまでイスラエルに最も親切な大統領に全ての決定を委ねて来たネタニャフ首相の治安ドクトリンは完全に麻痺してしまった」と報じた。
この3年間トランプ政権と波長が合って前進して来たが、ここに来て中東における新たな紛争に巻き込まれるのを恐れて米軍事力の使用を極度に控えようとしている気まぐれ大統領の前にイスラエルは直面せねばならなくなっている。(参照:「
BBC」)
その一方でトランプ大統領は、イランに制裁を重ねて来たことによってイラン市民の生活はより苦しいものになり、これまで以上に米国への反感意識を強めている。それが穏健派のロウハニ政権の瓦解を導いて強硬派が新ためて政権に就くようになると、イスラエルとの衝突の可能性はより高くなる。
イスラエルをこれまで極度に優遇し、その一方で核合意から撤退してイランに制裁を科して厳しい経済事情下に追い込んでいるトランプ外交はイランのイスラエルへの敵対心がより強まって中東をより一層危険な状況に追い込んで行く可能性がある。
<文/白石和幸>