しかし、ロスネフチ側も黙っていない。地道に「マドゥロ政権」を支えてきた実績を持つロスネフチは「エイブラムスの(インタビューでの)発言は一貫性に欠くものだ」と批判し、「シェブロンの操業の延長は同社への投資家を保護するためのものでしかない」と指摘した。しかし、仮にシェブロンが撤退すれば、その跡をロスネフチが占有する意思があることの言及は避けている。その場合にロスネフチが先ず狙っているのはシェブロンが30%の株をもっているペトロピアールと呼ばれているプロジェクトでの採掘事業である。(参照:「
Infobae」)
ロスネフチはベネズエラの石油を支配するのが最終の狙いだ。昨年10月には米国はヒューストンにあるPDVSAの子会社CITGOを保護するためにPDVSA債の売買を禁止した時があった。現在CITGOはグアイドー暫定大統領の管理下にあるが、PDVSA債の償還が出来ない場合はCITGOが債権者の手に渡る可能性があったからである。勿論、その債権者とはCITGOの49%の株主ロスネフチである。
また、米国のクリスタルルックスがチャベス政権時に国営化されたことで損害賠償を請求しているが、その対象にCITGOの債権の取得を請求したことがあった。その時にはロスネフチはCITGOが米国企業の手に渡ることを避けるために厳密は賠償請求額を審査することを法廷に要求したことがあった。(参照:「
ALNAVIO」)
中国もロシアと米国の狭間にあってベネズエラから原油を中国石油天然気が輸入してそれをベネズエラの中国への負債から相殺している。マドゥロ大統領は中国石油集団とのジョイントベンチャーを提案している。
マドゥロは米国への依存はできるだけ少なくしてロシアと中国による原油の開発を進めて行くのが狙いである。
<文/白石和幸>