ディズニーへ行く11号線では、明らかにパチモノなカチューシャを「3つで10元~」と声高に繰り返しながら各車両を回る男女が見受けられる。そして、そんな押し売り販売でさえ、支払い方法は「WeChat Pay」もしくは「Alipay」。前述の友人曰く、どんな年齢層であろうとスマートフォンを使いこなし、支払いはアプリというから驚きだ。
北京へ留学し、現在も毎月のように中国へ足を運んでいる別の友人女性がこんな怖い話を教えてくれた。
「(中国では)シェアモバイルバッテリーが当たり前になって、(バッテリーを)持ち歩く必要もなくなってるんだけど、もちろんQR決済で借りるの。で、充電やばい時に借りようとしたらスンって充電切れて借りれない上に、人民元は全部Alipayで管理してたから突然一文無しになった」
中国のキャッシュレス徹底ぶりには脱帽する。
もちろん、「現金がないとどうにもならない」とまではいかないらしいが、少なくとも
上海では快適に過ごすには「Alipay」もしくは「WeChat Pay」なのだと身に染みる旅となった。
中国旅行者に朗報! 短期の旅行客もAlipayを使えるように
しかしながら、「Alipay」にしても、中国で十二分に使うには、中国本土の銀行カード連携が必須。それには、中国本土で口座を開くにはビザおよび電話番号が必要で、一旅行者には不可能と言わざるを得ない状況だった。
そのため、知人に現金を渡す代わりに、アプリ内で送金してもらった残高で過ごす、もしくは全機能対応ではないものの、香港の銀行カードを連携するといった方法などの裏道を駆使する必要があったという。ただ、そもそも現地口座を持っている知人がいるケースも、香港の銀行口座なら持っている、というケースも極めてレアだろう。
クレジットカード(アプリに登録そのものはできてもQR決済では使えない)、中国系銀行の日本支店カード、日本系銀行の銀聯カードなど、用意できそうな道は全て閉ざされていた。中国内の発展したキャッシュレス文明は旅行者程度には開放されていなかった。そう、つい最近までは。
無事にクレジットカードからチャージが完了した画面
しかし、11月5日から、アリペイがショートステイの中国を訪れる海外旅行客がアリペイを通してモバイル決済を使用できるミニプログラム「ツアーパス(Tour Pass)」のサービスを開始したのだ。
使うためには、スマートフォンにアプリ「Alipay」をインストールし、その中のミニアプリ(LINEでいうショッピングやゲーム)にある独自機能「TourPass」に情報を登録すると、「Bank of Shanghai」の口座が割り当てられ、そこに自身のクレジットカードからチャージし、中国国内に限ってアリペイアプリを使ってレストランや店舗で支払うことができるようになったのだ。
ショートカットを作っておけば呼び出す手間も省ける
また、AlipayのライバルであるWeChat Payも、今後クレジットカードからチャージ可能にする方向だという。
IT化を推し進める地方都市などでは、顔認識払いなどの導入も進んでおり、中国旅行のハードルは高まるばかりかと案じていた矢先のこの革命。次に中国に行ったときはもう少し「便利さ」を痛感できるかもしれない。
<文/HBO編集部>