しかし、「では、部下と雑談をすればよい」というほどシンプルなものでもない。むしろ、部下から話をしに来たくなる状況を作る必要があるのだ。その方法として、以下の3つをご紹介する。
①ギフトによる「返報性の原理」を起こす
人間は、
「返報性の原理」という「人から何かをもらうと返さないといけない」心理作用を持っている。これを活用して、相手が返しやすい「恩」を売っておくのだ。例えば、安いお菓子をあげたり、コーヒーを一缶あげたりだ。
そうすると、今度は相手から「恩」を返すために近づいてくるので、このときに話す機会を作ることができる。部下のなかでは、自ら上司と非業務的な接点を持つという小さな成功体験を積むことになるのだ。何事も最初の一歩が踏み出しにくいなかで、「返報性の原理」によって相手を意図的に踏み出させるのだ。
②雑談のときには手を止める
上記のときに、PCやスマホ画面を見たまま話を聞いてしまう人がいるが、これは部下にとっては自己重要感を下げられる行為なので、絶対にやるべきではない。「上司に相談しても無駄だ……」と無力感を味わう部下の上司には、このような人が多いはずだ。忙しいのはわかるが、ほんの5分だけ手を止めて部下を見てあげてほしい。
③口コミ戦略
部下との話の最後のほうに、「同僚の◯◯君は、仕事順調?」という言葉をかけるのだ。そうすると、話に来た部下が「上司の◯◯さんが、心配してたよ」と、別な部下に話してくれるかもしれない。
直接的に自分に心配の言葉を投げかけられるよりも、第三者から誰かが自分のことを気にしてくれているのを聞くほうがポジティブな感情が働きやすいという
「ウィンザー効果」というものがある。この効果と、
「親近効果」という最後に話した情報のほうが脳に残りやすいという戦略を組み合わせて、部下にこちらの意図した行動を起こさせるのだ。
上記の戦略をPDCA的に繰り返すことで、部下とのコミュニケーションは活性化していくだろう。
しかし、すべてのテクニックの前提条件として、上司が人間的に信頼できるという前提がある。このテクニックを「部下を心配しての行動(For you)」か「部下を思い通りに動かすための行動(For me)」なのかによって、効果は異なる。あらゆる心理テクニックは人間性を前提とした信頼関係のうえに成り立つからだ。For me的、自己中な意図があるとテクニックは成功しない。目的を果たすにはFor you精神が必要だ。
あなたが、部下のことを心配して、何か行動を起こしたいのであれば、これらの方法をオススメする。
<取材・文/山本マサヤ>