更に、カルテルが反撃に持ち込んで来た武器のひとつに米軍が使用している
ブローニングM2重機関銃がある。1分間に500発以上発射でき、この性能を凌駕するものは今のところないという代物である。
国防省の報告によると、メキシコでは毎年20万件の武器が密輸入されているという。その7割は米国からである。この10年間に200万件の武器が密輸入されて、政府は僅かに19万3000件を押収しただけだという。
カルテルが如何に容易に武器を手に入れているかということを示すものとして、米国との国境にある49か所の税関で29か所は密輸入を摘発できるだけのインフラに乏しいとされている。また通関でトラックの重量を計る際にその重さに不審があってもそれを追求できない掟になっているというのだ。摘発すれば検査を担当した検査官の家族が報復される可能性があるということなのだ。(参照:「
Sin Embargo」)
結局、国家警備隊は彼を釈放することを決めたのであるが、その決定を誰がしたのか未だに明らかにされていない。しかし、メディアやソーシャルネットではその決定に憤慨していることがコメントされ、特に軍部では強い憤りを感じているという。
しかも、この事件があってから数日後にミチョアカン州の都市アギリリャで14人の連邦警察官が殺害された。同様にゲレロ州のテポチカにおいても軍隊と犯罪者の間で武力衝突があり15人が死亡した。
2007年から麻薬との戦いで25万人が死亡し4万人が行方不明になっている。
アムロは大統領選挙選中に良い報酬と新しい装備を導入した国家警備隊の創設を提唱していた。カルテルや犯罪組織への取り締まりを強化しようとしていたのである。良い報酬というのは一部警察官や軍人がカルテルと密着することを避けるするためである。実際、連邦警察と軍隊から派生させた国家警備隊は創設されたが、現在のアムロは麻薬とカルテルへの取り組みに何をしようとしているのか明確な方針を示さないままでいる。また、カルテルと結びつきの強い麻薬の一部は合法化するとアムロは述べていたが、その後撤回するという事態も起きた。(参照:「
Infobae」)
結局、これまでの大統領が実施して来たようにカルテルを武力でもって撲滅して行くしかないのか。アムロ大統領は岐路に立たされている。
<文/白石和幸>