筆者も含むボランティア団は持参したランプを使って中身を照らし出し、一つ一つモノを取り出して燃えるもの・燃えないものを分けてそれぞれ指定のゴミ袋に詰めていった。
ランプがないと中が見えないくらいだから、非常に暗い。しかも、木が朽ちている棚も斜めに傾いており、いつ倒れるかわからない。ガラクタを奥から取り出す際にこの棚が落ちてこないか「上」に注意していた。しかし、甘かった。
物置の少し奥に足を踏み入れた時に、バリッといやな音がした。
バリッという音と共に、筆者の体は30㎝ほど沈んだ。元々薄くて脆かったベニヤ板の床が、泥水を吸い込んだせいでさらに脆くなり、筆者の体重を支え切れず穴が開いたのだ。幸いケガはなかったが、足首が捻挫しても全くおかしくなかった。その際足に何か刺されば、さらに大きなケガにつながるおそれも十分にあった。
ここから筆者の危機感は一気に高まった。ボランティア現場でケガをする可能性は十分にあるということだ。
それでもガラクタを外に出さなければならないのでさらに薄暗い物置の奥へ足を踏み入れていった。もちろん、おそるおそる、抜き足差し足忍び足である。
大方のゴミを外に出し、あと残っているのは駐車場に運ぶタイヤだけとなった。慎重にホイールもついた未使用の大きなタイヤを持ち上げて、振り向いた瞬間だった。
再びあのバリッが聞こえた。心の準備はしていたはずなのに、またも30㎝陥没したわけだ。
幸い今回も捻挫はなく、何かが足裏に刺さることもなかった。
一つだけ悟ったのは、ボランティア活動の際には絶対に保険に入っておいたほうがよいということだ。一度入ってしまえば、来年3月末まで有効である。半年近く使える保険で五百円なら、一か月あたり100円未満である。
二時に守谷駅行きの車が出るということで、筆者の作業はこれまでとなった。帰りの際に、主催者から注意事項を与えられた。
「今日はアイスクリームを食べたり、ゆっくり風呂につかったりして、思い切り自分を甘やかしてください。今でこそ“まだできる”と思っているかもしれませんが、ボランティア活動による肉体的・精神的疲労はあなたが思う以上に蓄積されています。私自身、何日もボランティア活動を続けた後、燃え尽き症候群に襲われて四日間ベッドから起き上がれなかったことがあります。専門家によると、これはよくある症状なのだそうです。ですから、ご自身を過信せずに、今日はゆっくり休んでください。」
この言葉に従い、筆者は帰宅前に現場の近くにあるスーパー銭湯へ向かった。次回は、また別の現場での様子を伝えることとしたい。
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。