台風19号で被災した民家
「うちの目の前にある田んぼが水浸しになるのはよくあることだけど、高台で田んぼより5m以上高いうちが水没するなんて、夢にも思わなかったよ―」
10月16日、筆者は
茨城県常総市に赴いた。
台風19号で被災した家があると聞いたからだ。
冒頭の言葉は、実家が水没した同市住民の言葉である。これまで何度か台風15号による千葉県館山の現状について伝えてきたが、今回はある種、東京から隔離されている地方における19号の被災状態を伝えていくこととしたい。
集合は守谷駅だった。関東鉄道常総線とつくばエクスプレスが乗り入れる駅である。東京から見ると少し遠く見えるかもしれないが、千葉県我孫子市在住の筆者にとっては取手まですぐで、そこから乗り換えても30分かからない近場である。駅からは車で約25分の場所となる。
被災した家の近くに飯沼川が流れ、利根川に合流するようになっている。Sさん宅は老夫婦と五十代半ばの次男の三人暮らしである。以下のカギカッコ内はこの次男の証言である。
「うちの場合は、堤防決壊じゃなくて、あくまで越水でした。元々
大水が出たらわざとこの田んぼに水を入れて、被害を防ぐようにできているんですよ」
地図でも確認したが、Sさん宅は飯沼川から500m以上離れていて、しかも5m以上の高台の上に建っている。筆者宅の目の前に手賀沼があるが、どう見ても我が家のほうが水没の危険性は高そうに見える(註:なお、今回手賀沼が氾濫することはなかった)。
「オレは昭和40年生まれで、そのときにはもうこの家があったから、少なくとも六十年くらいはこの家が建っていることになるんだけど、うちが水没するなんて……」
自宅内に入ると、いまだに一階の床に泥水が残ったままとなっている。ご家族に確認しながら「いるもの」「いらないもの」を選り分けていくわけだが、押し入れの中にある衣服は全て泥水を吸い込んでおり、廃棄処分にするとのことだった。
以前、館山で「水分を吸い込みカビだらけになった畳がいかに重いか」触れたが、この家でも座布団が重くなっていた。