子どもは母やきょうだいを守るため、モラ父の機嫌をとる
3、別居、離婚できない理由も際限がない
被害妻たちは、別居、離婚できない「理由」に囚われることがある。よくあるのは、上記の2つだ。つまり、
1:夫が怒るので別居、離婚できない。同意を得ない別居など怖くてできない。
2:私にも落ち度があるので、離婚できない。
そのほか、よく挙げられる理由には、次のものがある。
3:子どものためには、両親が揃っていた方がよい。私(妻)が我慢すれば家庭が維持できる。
4:転校させたら、子が可哀想だ。
5:生活費、学費が不安である。
まず、1については、同居を継続し今後も怒られ続けられることを考えれば、乗り越えるしかない。モラ夫との離婚に慣れた弁護士に交渉を任せれば、モラ夫からの直接加害を防いでくれるはずだ。家裁実務では、別居し婚姻破綻が認められれば離婚できるので、2も気にする必要はない。
次に、3、4は、モラ被害とその悪影響をどの程度とみるかの問題である。母親の不幸せや父の母へのモラ加害は、子どもに甚大な悪影響がある。心身の発達が阻害され、本来の才能が抑え込まれることもある。
子によっては、母やきょうだいを守るために、或いは、自分自身を守るために、モラ父の機嫌を取ることがある。この場合表面的には、父子関係が良好にみえる。
ところが、別居後しばらく経つと、子は、モラ父の恐怖から解放されて、父がどんなに怖かったかを語り始めることがある。
反対に、モラ父に完全に同調する子どもは将来、モラ男になる可能性が高いだろう。すなわち、モラ夫との婚姻生活の継続が、本当に子どものためかどうか、よく考える必要がある。
自分の「落ち度」を一つひとつ潰さなければ前に進めない被害妻たち
冒頭の事例に戻ろう。私は、
「受任後は私が矢面に立つので、彼から直接怒られることはありません。私が彼の怒りを受け止めます」
と述べた。相談者は、安堵の表情を浮かべた。
そして、相談者は、離婚をアドバイスした私に対し、次々と自分の「落ち度」を持ち出してきた。長年、夫から責め続けられた「落ち度」を一つ一つ潰さなければ、前に進めないのだ。
そして、「落ち度」を潰す作業が終わると、「離婚できない理由」との闘いが始まる。長年のモラ被害により、判断力が削られてきたので、相談者の思考は、しばしば堂々巡りになる。これらを乗り越えると、ようやく、自らの将来を思い描けるようになっていく。
以上、離婚へのハードルは低くない。しかし、そもそも幸せになるために結婚をしたのであって、妻だけが我慢を強いられる結婚は間違っている。洗脳が解ければ、法手続きとしてのモラ離婚自体は難しくはない(第23回
暴力や不貞がなくとも、数年別居しなくともモラハラ夫との離婚は可能)。
決断に遅過ぎることも早過ぎることもない。決断したときが前に進むときである。