家事を普段しない人ほど、「見えない家事」には気づきにくい
家庭での家事負担には、夫婦間で大きな偏りがある。一般社団法人ストレスオフ・アライアンスが2018年12月に発表した調査結果によると、約8割の男性が平日、休日ともに家事を1時間もしていないことがわかっている。顕著なのが、洗剤の詰め替えや掃除機のゴミ捨てといった「見えない家事」に充てる時間だ。そうした「家の中の雑務時間」に1時間以上を費やす人の割合を男女別に見ると、男性は6.8%に対して女性は20.2%と3倍近い差が開いている。
調査の結果からは、普段家事をしない人ほど家事の表面的な面ばかりを見て、その裏に細かい作業があることを意識できていない可能性が高いことがわかる。たとえば、掃除であれば掃除ロボットが動けるように床の上の物をどける、洗濯であれば特定の洗濯物を洗濯ネットに入れるといった「雑務」があるが、その部分が抜け落ちると「何が大変なのか?」との思いを抱いてしまう。
しかし、こうした「名もなき家事」を言語化することで、「料理」や「洗濯」「掃除」と同じように、存在そのものを意識できるようになりそうだ。
本書に興味を示した筆者の妻は、「わかる」「ほんと、面倒なんだよね」とうなずきながら読み進めていた。そしてこんな感想を漏らしていた。
「一見するとそんなに手間じゃなく映るけど、これが毎日とか2日に一回とか高頻度で発生するからつらい。
私の場合は、実際に手を動かすよりも、『最初に何をして、次に何をして』と家事の順番を考える作業が面倒。仕事や育児もあるし、限られた時間でどうするかを考えるわけだから、家事って頭脳労働」
確かにその通りで、家事はパズルのようなものだと筆者は感じる。自分の持ち時間からひとつの家事にかかる時間を逆算して、できそうな家事をする。これを考えるのは、なかなかに疲れる。
また、奥さんの妊娠をきっかけに家事を積極的にするようになった知人の男性に「名もなき家事」について聞いてみたところ、
「洗濯って洗濯機に汚れものを入れてスイッチを押して終わりではなく、汚れがひどければ事前にシミ取りをしたり、糸くずフィルターの掃除をしたりしないといけない。
キッチン周りの家事にしても、食洗機が使える食器とそうではない食器に分けたり、水気が残っていないかを確認しながら食器棚に戻したりと、やることがたくさんあります。家事のことを考えながら仕事をするって、頭が疲れますね」
と本音を漏らしていた。
このように、名もなき無数の家事は、人を疲れさせる。大切なのは、完璧を目指さないことだ。そんなことをすれば、いつか心身が参ってしまう。
梅田さんは本書の終わりに、次のような一文を添えている。
「家事は無限にある。だからこそ、完璧はありえない。不完全でいいじゃないか!」
<取材・文/薗部雄一>